過去8年で中国の出生者数が半減…習近平政権が「本気の反一人っ子政策」を宣言
「国民は、産めよ、育てよ!」
先週、中国が「反一人っ子政策」に、本格的に乗り出した。10月28日、中央政府にあたる国務院が、同月19日に発令した「2024年48号通知」を公表したのだ。正式名称は、「出産子育て支持政策システムの完備加速と出産子育て友好型社会建設推進に関する若干の措置」という長いものだ。 【写真】習近平はもうおしまいなのか…中国人民解放軍で「静かなクーデター」 要は「14億国民は、もっと産めよ、育てよ!」という指令である。1980年頃から2015年まで続けてきた「一人っ子政策」を完全に否定する政策を、本格的に始めるというのだ。後述するように、その背景には将来に対する強い危機感がある。 具体的には、「4つの指針」と「13の措置」を打ち出した。まとめると、次の通りである。 <4つの指針> 1. 出産子育てサービス支持の強化 2. 養育サービスシステム建設の強化 3. 教育、住居、就業などを支持する措置の強化 4. 出産子育て友好社会の雰囲気造成 <13の措置> 1. 出産子育て保健保障の功能増強 2. 出産子育て休暇制度の完備 3. 出産子育て補助などの制度確立 4. 妊娠健康サービスの強化 5. 児童医療システム建設の強化 6. 包括的な託児所サービス供給の増加 7. 包括的な託児支持政策の完備 8. 児童の発育と保護の促進 9. 良質な教育資源供給の拡大 10. 住居支持政策の強化 11. 労働者の権益保障強化 12. 新たな結婚出産子育て文化の積極的な構築 13. 社会宣伝、提唱の強化 このように、今後、国を挙げて「人口増加政策」を進めていくという決意を示したのだ。重ねて言うが、その背景には、中国がこの先、とめどもない少子高齢化社会を迎えることに対する強い危惧がある。
できる政策は何でもやる
中国の厚生労働省にあたる国家衛生健康委員会は、この重要通知を受けて、翌29日に、国民の5つの疑問に対する回答を発表した。そこには、実際に行っていく具体策や、通知を出した意図などが網羅されている。以下が、その要旨だ。 1.今回の措置は、どんな考えで出したのか? この頃は、経済社会の発展と人口年齢構造の変化に伴い、わが国は全体的に、人口増加から減少の発展段階にある。少子化、老齢化、地域人口の増減の分化などが明確な特性を見せるようになってきた。そこで、中国式現代化が直面する新たな人口環境と条件を推進していくのだ。(中略) (2023年5月5日の習近平総書記の重要講話など)党中央、国務院の要求、国家衛生健康委員会、国家発展改革委員会などの部門が進めた深い研究などに照らして、また国際的な経験をも鑑(かんが)みながら、国内のやり方を総括し、広範に意見を採取し、各方面のコンセンサスを結集させて、今回の措置を作り上げた。 2.出産子育て支持政策システムは、どんな方面で進展があるのか? 現在のところ、わが国の主要な出産子育て支持措置は、経済的支持・サービスの支持・時間的支持・文化的支持の4つの方面に集中させている。 経済的支持の方面では、国家が3歳以下の嬰児(えいじ)の面倒をみる。子女教育の費用にかかる個人の所得税に限って控除を与えていく。2023年の基準だった子供一人あたりの(負担金)1000元(約2万1500円)を2000元(約4万3000円)に引き上げる。23の省(日本の県に相当)では、異なる(所得)階層で出産子育て補助制度の実施を検討する。20以上の省で不妊治療サービス分野の補助として、医療保健の支払い範囲内とする。 サービス支持の方面では、第14次5カ年計画(2021年~2025年)の計画にある「人口1000人あたり4・5ヵ所の託児所(設置)」を重要指標とする。 時間的支持の方面では、各省(区、市)の出産休暇を普遍的に158日もしくはそれ以上に延長する。過半数の省で出産補助金の支給期限が158日を下回らないようにする。各地で15日前後の配偶者付き添い出産休暇を設立し、父母にそれぞれ5日から20日の育児休暇を与える。 文化的支持の方面では、2023年8月、国家衛生健康委員会、中央宣伝部など14部門が、出産子育て友好宣伝教育の展開を手配した。(中略)各省(区、市)が、国際家庭デーや世界人口デーなどの重要な節目の日を利用し、広範な社会宣伝を展開し、新たな婚育文化を提唱していく。 3.今回の措置は、主にどんな内容なのか? 主に6つの部分からなっている。第一部分は総合的な要求で、習近平新時代の中国の特色ある社会主義思想の指導を仰ぎ、出産子育て支持政策システムの完備と制度の奨励、適切な出産子育てレベルの実現を推進するため、人口のハイレベル発展を支えとするよう促進していく。 第二から第五部分は、この措置の主要内容で、出産子育てサービス支持の強化、養育サービスシステム建設の強化、教育・住居・就業などを支持する措置の強化、出産子育て友好社会の雰囲気造成という各方面での一覧を提示した。これは今後の重点実行活動任務だ。 第六部分は、組織に対する実施の要求だ。(以下略) 4.今回の措置の突出した特徴や優れた点は? 第一に、政治の立場を引き上げたことだ。習近平新時代の中国の特色ある社会主義思想の指導を仰ぐことを堅持し、中国共産党第20回党大会(2022年10月)及びその第2回、第3回全体会議の精神を全面的に貫徹し、新たな発展の理念を正確に整理し、全面的に貫徹し、人民を中心とした発展思想を堅持していく。(以下略) 第二に、重要な政策の協同だ。(中略)今回の措置は、人々の多元化した出産子育ての要求を、十分に考慮している。結婚、出産、養育、教育を一体に考慮し、出産子育てサービス支持を強化することから、幼児子育てサービスシステム構築の強化、教育・居住・就業などの支持措置の強化、出産子育て友好社会の雰囲気造成まで、各方面の具体的措置を提起し、一連の総合的な支持政策を形成している。 第三に、積極的なイノベーションの探索だ。(中略)出産補助制度実施方案と管理規範の制定、地方の政策との連結指導、(中略)基本医療保健の条件を柔軟にし、就業者・出稼ぎ労働者・新たな就業形態の人々が出産保険に入れるように地方に指導していくことなどだ。 5.今回の措置は提起された後、いかにきちんと実行されていくのか? 今回の措置は、文書にある組織が提起した専門的な要求を実施していく。各関係部門がしっかりと政治的な立場を引き上げ、新時代の人口政策に責任感と使命感をもって、さらにきちんと取り組んでいく。(以下略) 以上である。習近平政権の「ヤル気」が漲(みなぎ)っている感がある。