カミングアウトは自分が生きやすくなるため──女性を「取り戻した」、あるフィットネスコーチの物語 #性のギモン
カミングアウトは自分が生きやすくなるため
トランスジェンダーへの理解不足は、海外でも感じるという。 「私が育ってきたドイツもそう。レズビアンやゲイに対しては結構オープンですが、トランスジェンダーに関しては閉鎖的というか。そこは、世界中どこも一緒。むしろ日本はテレビに‟オネエタレント”もたくさん出ているし、理解は進んでいる方かもしれません」 トランスジェンダーをカミングアウトすれば、就ける仕事は限られるかもしれない。だが、カミングアウトを迷っている人には堂々としてほしいし、その近道は性別に捉われない自分にしかできない武器(仕事)をみつけることではないか、と松本さんは考えている。 自身のカミングアウトも誰かのためではなく、自分がより生きやすくするためだったと改めて強調する。 「どう捉えられるかはわからないですが、人のためとか、誰かの勇気になればとか、そんな思いはなくて……。人に迷惑をかけないのであれば、自由に好きにしたいというのが私の考え。もちろん、結果的に自分のしたことが誰かのためになったらうれしいですけどね」
2年前にY.S.C.C.横浜に自分を誘ってくれた監督は、今季、別のクラブの監督に就任するためチームを離れた。新たな指揮官のもとで仕事を続ける松本さんにとっては勝負の年といえる。 「チームの結果はフィットネスだけの問題ではないし、私は戦術的なことや技術的なことはわからないので自分ではどうしようもない部分もあります。でも、プロの世界にいる以上、結果がいちばん評価されるところですから。 Y.S.C.C.横浜にずっといられるかはわかりませんし、もし他のクラブだったら私の選択ができたかどうか。ただ、私自身どんな競技かにかかわらず、アスレティックパフォーマンスコーチとして求められれば全力でサポートするつもりですし、自信もあります。いつかはJ1のクラブで仕事をしてみたいですし、WEリーグ(日本女子プロサッカーリーグ)やプロ野球、バスケットボールなどのチームにも興味はあります。まだまだ男性アスリートの世界には女性のコーチは少ない。もっといろんな経験をしながらまた新しいチャレンジができたら面白いかなと思っています」