子どもが性の悩みを気軽に相談できる関係性をつくるには―家庭での性教育で心がけたい三つのポイント #性のギモン
家庭で子どもに性教育をしたほうがいいのか、いつからどのように伝えるべきなのか悩む保護者も少なくないだろう。NPO法人ピルコン理事長の染矢明日香さんは、そんな不安を抱える保護者に向けて日々講演会やワークショップを実施している。染矢さんに、家庭での性教育のあり方や性的同意の重要性について話を聞いた。(聞き手:荻上チキ/TBSラジオ/Yahoo!ニュース Voice)
「性教育を始めるタイミングはいつでもいい」家庭でおさえるべき三つのポイント
学生時代から性や健康に関する啓蒙活動をおこなってきた染矢さん。きっかけは大学3年生のときに思いがけない妊娠をし、中絶を選んだことだった。「学校で性教育は受けていたものの、避妊について正しい知識を持っていなかった」と当時を振り返る。この経験をふまえて、子どもや若い世代が誤った性知識に振り回されないよう、若者には性について気軽に学べる機会を、大人には子どもへの性の伝え方を学ぶ機会を提供している。 ――家庭で性についての話をするとき、何をポイントにすればいいのでしょうか。 染矢明日香: ポイントは三つあります。一つめは、伝える側が性を「大切なもの」「価値があるもの」「人生を豊かにしていくもの」として肯定的に伝えていくことが重要です。性教育というと、性被害などの危険を防ぐために「〇〇しちゃいけない」とか「〇〇はダメ」など、性的なものをタブー視する方向へ意識が向いてしまうことも少なくありません。 しかし、性教育の目標は、自分の人生や性生活を安全にし、満足して自分で決めていけるようになることです。性を頭ごなしに否定してしまうと、いざ問題が起こったときに「自分が悪い」と思って一人で問題を抱えるようになったり、性は卑猥なことだから学ぶこと自体が恥ずかしいという意識を持ったりしてしまうのです。「性的なものは全部ダメ」と言うのではなく、お互いのプライバシーを尊重しながら、合意形成していく大切さを伝えることが重要だと思います。 二つめの大事なポイントは「真剣に語る」ということです。「先生が性教育を下ネタのように扱っていて、すごく不快感を覚えた」という子どもの声を聞いたことがありますが、性教育をする側も「これは大事なことなんだ」とモードを切り替えて伝えることが必要だと思います。そうしないと、本当の意味での健康教育や人権教育の性教育にならないからです。伝える側の態度が二次加害や嫌悪感を与える機会にならないよう気をつける必要があると思いますね。 三つめのポイントは「伝え方」です。性教育をするときに科学的に正しい言葉を使うことは大切だと思いますが、家庭で話すときは、わかりやすいキーワードや話しやすい言い方をしても良いと考えています。特に性器の呼び方やマスターベーションについては話しづらいことだと思うので、「ウチではこう話す」という独自の呼び名を作るのも一つの方法です。 特に、マスターベーションについては、親自身があらかじめ説明する言葉を想定しておくことなどが大切です。例えばお風呂の中で長時間シャワーを性器に当てている姿を見たときに、そういった場面が想像されていないと、びっくりして「何してるの!」と言ってしまったり、逆に何も言えなくなってしまったりすると思うんですよね。でも自分の中で準備をしていれば、「性器にシャワーを当てると気持ちいいよね。でもあまり強い刺激があると炎症の原因になるから優しく触ろうね」とか「人前で性器を触るのはマナー違反だから、一人でいるときにしようね」といった声かけができるのかなと思います。 また、子どもがかゆみや痛みを感じて性器を触っているときに「触っちゃいけない」とタブーにしてしまうと、悩みを打ち明けるのが難しくなってしまいます。前もって「そこは大事なところで、痛いときやかゆいときはママやパパに言ってね」と伝えておくと、トラブルがあったときにすぐに親に言えるという安心感や風通しの良い関係性の構築にもつながります。