青森の女性カップル 婚姻関係がないと制度上「生きづらい」
“事例”を各地で集めていく
―― 不受理後に残念会としてのパーティーを開きましたが、参加した人の反応は? 田中さん Facebookでは「おめでとう」と言ってくる人がいた。すごい嫌だったんです。でも、言ってくれた人に対するものじゃない。そもそも(受理されないので)結婚じゃないですから。市役所に一緒に行ってくれた人は誰一人として「おめでとう」という言葉を口走らなかった。でも「ナイス、ファイト」とは言われた。 佐藤さん 何と闘っているのか分からないけど、世の中にいなくされている感とか。びっくりしている職員たちに対して、「これが当たり前の姿なんだ。私たちは存在する」ってことの闘いだったし。一緒に来てくれたある人は「自分たちがしたら……」と、同じような緊張感でいてくれた。残念会のときは参加したみんなが一緒に悔しがったり、「また来年も行くべ」という話をしていたり。 ―― 今後は 田中さん 現状、私たちにとっての選択は裁判ではないと思っている。一個一個、課題に立ち向かうしかない。そうした“事例”を各地で集めていくのもいいと思う。果たして今後、憲法判断になるのか、戸籍法などの項目になるのか。今回のことが他の役所の人たちにとっても考えるきっかけになるのではと思う。こうした情報を集積していくことの必要性は感じている。 (※筆者注)例えば、財産関係など司法書士に公正証書を作成してもらう必要がある。共同生活に関する合意事項などを作り、配偶者と認められれば、遺言書がなくても2分の1以上の相続分が法律で認められるし、相続税も安くなる。病気や交通事故で緊急で入院した場合でも、手術等の治療方針に同意をすることもできる
※ ※ ※ 長年、検討課題だった非嫡出子の相続差別規定は最高裁で違憲判決(2013年9月4日)が出されて、相続分が同等になりました。憲法第14条1項の法の下の平等が根拠です。青森市の女性2人は裁判ではなく、ケースを積み上げて行こうとしています。そして、法整備が進むなどして、窓口の職員に「おめでとう」と言われる日を待ち望んでいます。日本ではこれまで積極的には論じられてこなかった同性婚の問題。議論の行方が注目されます。 (ライター=渋井哲也)