青森の女性カップル 婚姻関係がないと制度上「生きづらい」
来年も婚姻届を出しに行く
佐藤さん 待たされていたときに、他の職員の人たちの「珍しい人たちが来た」みたいな対応が傷ついた。 田中さん 見に来て、隠れるみたいな。ちらっと、つい立てみたいなのに隠れるんです。 佐藤さん 社会の中で(私たちのようなセクシャル・マイノリティーが)存在することを当たり前に受け止めてもらえない。こういう気持ちを味わなければならないことを再確認した。 田中さん 窓口に行く前に整理券をもらいますよね。目的を言うのですが、「婚姻届を出しに来た」と。整理券を配る女性に「おめでとうございます」と言われるんですよね。 佐藤さん 無条件に。 田中さん 悪気がないのは分かるんだけど、一般の人にとっては当たり前のことなんだなって。 ―― それでも窓口担当職員には思いのひとかけらくらいは伝えられた 田中さん 窓口の人はすごくいい人だった。差別的なことも言わなかったし、「同性の方ですよね?」という、その瞬間から理解してくれていた。最後に、なんでこの場所に来たのかを伝えた。青森にもセクマイ(セクシャル・マイノリティ)はいるし、制度を使えない人はいっぱいいる。それを知ってほしかった。そして「また、来年も来ます」と言ったんです。 佐藤さん ずっとここにいるということを言い続けるし、毎年、名物みたいに見られても、「まだ同性のパートナーはダメなんだ」と窓口の人は思う。もし10年とか何十年後かにOKになったとして、私たちが窓口に行ったときに「やっと受理できますね」と言ってもらえる日が来たらいい。
婚姻関係ないと一緒にいられない場面がある
田中さん 私はもともと婚姻制度があまり好きじゃない。けれど、婚姻制度を使わないと生きづらい社会であることは確か。 昨年、佐藤さんの母が亡くなって、自発呼吸ができないときにも、血縁ですか? と言われて、わたしは血縁者じゃなかったのでそばにいられなかった。佐藤さんは一人っ子で他に家族もいない。その全部の判断を一人でしなければならなかった。一緒にいられない場面があることを改めて実感した。 佐藤さん 新たに望ましい制度を作っていくことと、今ある制度のどこを活用するのかは平行していると思う。新しいもの、使い勝手のいいものが作られればいいけど、現状で言えば、別の書類を何個も用意をしなければならない(※筆者注)。 田中さん 緊急の時はいつ来るかわからない。何種類の書類を常に携帯しておかないといけない。それが「配偶者です」とか、「夫です」「妻です」といえば、救急車両にも乗れるし、病院に付き添ったり、駆けつけても病室にすぐ入れるし、緊急の判断もできる。法整備をするということ以上に、役所の人にわかってほしかった。異性間の事実婚と違う面がある。 また、青森市の場合は、公営住宅には同性パートナーは入居できない。大半の自治体が、同性の同居というのを公営住宅では認めていない。でも、事実婚はもちろん、男女であれば婚約者でさえ認められているところが多い。言いだしたらきりがない。