「幼稚園みたい」な日本の高齢者デイサービスは誰のため? 個人の希望に沿った過ごし方ができるスウェーデン
日本とスウェーデンのデイサービスの違いはなぜ?
日本のデイサービスには、自立度の低い人から高い人まで、多くの人が通います。一方、スウェーデンは、自立度が高い人はサークルや教会や市町村等が行う余暇活動に参加し、自立度の低い少数の人しかデイサービスに通いません。そのため、スウェーデンは日本に比べ、デイサービスにお金を厚く投入できます。 また日本では、デイサービスの目的の一つは家族の介護負担軽減です。そのため、通いたくないという本人の希望はあまり尊重されません。一方、スウェーデンでは本人の同意が必要で、本人と社会のつながりを作ることが目的であるため、望まない人は通いません。 さらに日本では、職員が決めた娯楽等を集団で行います。子どもっぽいことも多いです。一方、スウェーデンでは、本人が決めたことを普通の暮らしの中で、個人または少人数で行い、子どもっぽさはありません。父権主義と個人主義の違いによるのかもしれません。 「晩年は好きなように生きたい」と誰しもが願いますが、わが国の要介護高齢者は、その願いがなかなか叶(かな)えられません。自己責任が認められず、保護の対象だからです。しかし、高齢者の人権は尊重され、尊厳は守られるべきです。「好きなように生きるためにはどうしたらよいのか」を考える上で、スウェーデンのデイサービスのあり方は、参考になるのではないでしょうか。(宮本礼子 内科医)
宮本礼子(みやもと・れいこ)
(公財)日本尊厳死協会理事・北海道支部長。前江別すずらん病院・認知症疾患医療センター長。1979年、旭川医科大学卒。内科医。専門は認知症医療と高齢者終末期医療。2012年に「高齢者の終末期医療を考える会」を設立し、代表となる。著書「欧米に寝たきり老人はいない(夫、顕二と共著)」(中央公論新社)、「認知症を堂々と生きる(共著)」(同)。
長谷川佑子(はせがわ・ゆうこ)
スウェーデン在住。スウェーデン国シルヴィア王妃認定の認知症専門看護師。ウプサラ市・認知症ケアホーム認知症専門看護師。ウプサラ大学アカデミスカ病院老年急性期内科看護師。兵庫県立看護大学卒。 ママ&キッズのための情報サイト「グローリア」でスウェーデンの子育てについて連載。 https://www.glolea.com/ambassador/eri-swe スウェーデンの仕事や日常生活など「note」で紹介。 https://note.com/silviassk/