「幼稚園みたい」な日本の高齢者デイサービスは誰のため? 個人の希望に沿った過ごし方ができるスウェーデン
利用者とケアワーカーは、テーブルの上のそれぞれの席に、青いテーブルマット、白いお皿、コーヒーカップを置きます(写真3)。コーヒーメーカーにコーヒー豆を入れると、「いい香りだね」と笑顔になります。 利用者が全員そろうと、コーヒーを注ぎ、固いパン、柔らかいパン、黒いパン、白いパンが入ったかごから、各自が好きなものを選びます。チーズ、野菜、卵なども取り、自分好みのオープンサンドイッチを作ります。おしゃべりしながら1時間かけて、利用者とケアワーカーはお茶とサンドイッチを楽しみます。 その後は、天気に関係なく散歩に出かけます。散歩コースは宮殿の庭が多く、林のような所から手入れの行き届いた所まで、利用者とケアワーカーはどこを歩くのかを相談します。散歩の時間は利用者のペースに合わせ、30~40分です。 その後、昼食を作りたい人は、ケアワーカーと一緒に作ります。朝10時にオープンサンドを食べているので急ぐ必要はなく、ゆっくり自分にできることをします。 料理をしたくない人は、楽器を弾いたり、新聞を読んだり、お皿を並べたりして、昼食ができるのを待ちます。 昼食が終わると、4人の利用者はボーリングゲームをし、3人の利用者はクラシックカーのドキュメント番組を見ながら、自分が乗っていた車の話をしていました。別の女性は、ケアワーカーからハンドマッサージとマニキュアをしてもらっていました。コーヒーを飲みたい人は、自分でキッチンから持ってきます。みんな自分の家にいるように、気楽に過ごしています。
やりたいことを好きな場所で少人数で
このシルビアホームは、中央に広い部屋があり、その四隅にはソファーのある小さな空間があります(写真4)。利用者はやりたいことを、好きな場所で、少人数で行います。クリスマスやイースターには室内を飾りますが、家庭にないような幼稚なものは飾りません。 3時を過ぎると迎えのタクシーが来て、ばらばらに帰って行きます。 プログラムは事前に決めず、その日の利用者の体調や希望に合わせます。事前に決めるのは昼食のメニューぐらいです。 デイサービスは、何かをするためではなく、利用者が安心して充実した一日を過ごすための場所です。そのため、利用者がどのような思いを抱いているのかを知ることが大切です。シルビアホームには、創設者の王妃が時々自転車で様子を見に来ています。(長谷川佑子 認知症専門看護師)