コインチェック事件に揺れる仮想通貨は、社会からの信頼を取り戻せるか
国は、仮想通貨ビジネスにどのように関与すべきなのか
一方で、国は仮想通貨ビジネスにどのように関与していくべきなのでしょうか。現在、金融庁は企業の不祥事などを受けて仮想通貨取引所に対する監督を強化していますが、これから国は消費者を保護するために厳しい規制を行うことと、規制緩和などによって仮想通貨市場の成長を後押しすることという難しいジレンマを抱えることになります。 チャールズさんは、グレービジネスとして長い歴史を持つパチンコ業界を例に挙げて「日本政府には、基準や規制の先をいく自由を市場に与える余裕がある」と評価した上で、仮想通貨ビジネスに関しては「成長を見守ってきた業界に対して政府が強い意見を発信し、市場に健全化を促すタイミングに来ている」と語ります。「当然、業界からは『規制が厳しすぎる』『システム投資コストが掛かりすぎる』といった反発も生まれるだろう。しかし、その対極にはマウントゴックス事件やコインチェック事件がある」(チャールズさん)。 新たなビジネスを推進する上で、国の介入や規制強化は誤った方向へと進む業界を是正する"最終手段"だと言うことができます。チャールズさんもこの点について、「業界内で自主規制が充分に機能しているのであれば問題ない。事件が発生しても、債権者への保証が速やかに行われ、業界全体で事件から学び成長できるのであれば、国の介入は必要ない」と語ります。多額の個人資産が動くビジネスである以上、国の関与は欠かせません。しかし重要なのは金融庁が業界をどう監督するかではなく、業界がどのようにビジネスの健全化に向けて努力していくのかということではないでしょうか。 「米国では、業界が公平性をもって知的な成功を遂げられるのか、人間の欲に偏った不公平、不透明、不誠実な成長を遂げてしまうのかを国が見守ってきた。その中で、業界が様々な過ちを犯し続けた結果、国の規制管理当局が介入した。自分の行動規範は自分たちで決められる。仮想通貨に関わる企業がビジネスをどのような基準で動かすのか、自分たちをどう管理するのか、そして業界がそうした規範をどう捉えていくのか。そうした全てが規制当局の判断を左右する」(チャールズさん)。 確かに、振り返るとコインチェック事件が発生して以降、業界団体である日本仮想通貨事業者協会や日本ブロックチェーン協会から事件の検証報告や新たな安全基準の策定などの動きは見られず、また3月に設立発表された仮想通貨交換業協会も、金融庁による立入検査や行政指導を続く中での発表となり、業界全体で事件を受けた対応策が後手に回っている印象があります。