コインチェック事件に揺れる仮想通貨は、社会からの信頼を取り戻せるか
コインチェック事件は、なぜ生まれてしまったのか
チャールズさんには、まず仮想通貨そのものが今後挑むべき課題を聞きました。では、この仮想通貨が流通する環境にはどのような課題があると考えているのでしょうか。過去にマウントゴックス事件を経験した業界は、コインチェック事件を通じて、仮想通貨が流通するプラットフォームである取引所が依然として脆弱であることを露呈しました。チャールズさんは、コインチェック事件を受けて社会から生まれた不安の声を指して「これこそが、世の中で仮想通貨がまだ機能していない大きな理由だ」と語ります。 「世の中はすべてのことが信頼で成り立っている。日本円が額面通り機能するのはそこに信頼があるからであって、医者の治療を受ける際にも、その医者が適切な教育を受けて技術を有していると信頼できるから身を任せることができる。仮想通貨がどれほど素晴らしい技術をもっていて、高い利便性を実現しても、信頼を失ってしまえば市場そのものが死んでしまうのではないか」(チャールズさん)。 そして、この信頼を担保するために最も重要な役割を果たすのが、仮想通貨取引所だとチャールズさんは指摘します。何兆円という資産が預けられている世界中の取引所にとって、ハッキングへの防御など安全性の追求は最も重要なテーマになるでしょう。しかし、チャールズさんは「取引所の対策は前進しているとは言えない」と評価します。その理由とコインチェック事件が示唆した課題について次のように語りました。 「国が取引所に求めている安全基準にバラツキがあり、取引所を運営する企業も技術レベル、知識レベルにバラツキがある。国による文化的な違いも大きい。コインチェック事件は、こうした仮想通貨取引所の弱点が生み出した事件だといえるのではないか。国による規制も大事だが、一方で業界による国際的な技術水準の設定も必要になるだろう。 また、投資した人にとっては、預けた場所がホットウォレットかコールドウォレットかなどというのは関係ない。ただただ預けていたお金が消えてしまったということ。業界が今後育っていく上で最重要な課題は、こうしてお金がなくなったときに、その資産が保証される仕組みを確立することだ」(チャールズさん)。 コインチェック事件を巡っては、運営会社が債権者に対する損害賠償を表明していますが、仮想通貨は原則としてその価値を国や企業が保証しない仕組みとなっており、またサイバー攻撃や企業破綻などによって消失するリスクがあることを取引所が規約などで表明していることから、全ての事件で債権者の資産が守られるとは限りません。こうしたリスクに対する不安が拭えない状態を解消する仕組みを考えていくことは、世の中の信頼を取り戻すために不可欠だといえるでしょう。 3月2日には、仮想通貨取引所を運営する16社が新たな業界団体を立ち上げましたが、「業界全体で一定以上のセキュリティの水準を確保すること」と「損害が発生したときに債権者を保護すること」という2つの大きなテーマにどのような解決策を見出すのか、注目したいところです。