コインチェック事件に揺れる仮想通貨は、社会からの信頼を取り戻せるか
仮想通貨はまだ通貨としての機能を持っていない
まずチャールズさんに伺ったのは、現在の仮想通貨はイーサリアムを創設した当時に思い描いた“本来あるべき姿なのか”ということ。仮想通貨は本来、法定通貨(円やドル)やクレジットカードに代わる新たな決済手段として誕生したはずです。しかし、日本では価格の高騰を背景に投資の対象としての注目が高まり、仮想通貨取引所はマネーゲームの舞台と化しています。こうした現状について何を感じるのでしょうか。 チャールズさんの見解は、仮想通貨はまだ通貨としての機能を有するには至っておらず、まだまだこれから進化が必要だというものです。「ビットコインはお金に取って代わる存在だという人がいるが、私はビットコインがお金だとは思わない。どちらかというと、金をデジタル化したものというイメージだ」(チャールズさん)。 金は、そのものは様々なモノと交換できる価値を有しながら、一方でその価値は相場によって大きく変動します。仮想通貨はまさにこれと同じような存在であり、その流動性の強さ故に経済活動を支える通貨としての価値を持つ存在には至っていないというのです。「店舗にとっては、法定通貨は額面通りの価値を認識して安心して利用できるが、その通貨が仮に仮想通貨になると毎日のように相場が乱高下するなかで利益など生み出せないかもしれない。仮想通貨が通貨であるためには、将来にわたって価値が安定している必要がある。市場の中で安心して使えないものが、通貨にとって代わるわけがない」(チャールズさん)。 チャールズさんが挙げた“安定性”というキーワードは、仮想通貨が通貨としての価値を担保するための重要なものです。お金の歴史を振り返っても、物々交換から始まったその歴史は、交換する対価が金や銀に変わり、それが形を変えて紙幣になり、国が価値を保証する法定通貨として進化していきました。仮想通貨が安定した価値を世の中に提供するためには、まだ進化が必要なのです。 「金の特徴に似た存在であるビットコインが法定通貨と同じ役割を果たすのには無理があるが、今の時代も金や銀が取引されているように、ビットコインは今後も取引されていくことだろう。社会の中でお金として機能するためには、より進化した仮想通貨の登場が求められるのではないか」(チャールズさん)。 では、仮想通貨は世の中で通貨として機能するための"安定性"をどのようにして生み出せばいいのでしょうか。相場がこれほど大きく変化している中で、仮想通貨の価値は倍になることもあれば半減することもあります。安心して使えるようなものには至っていません。 チャールズさんによると、このテーマについてはIOHKのチームも含めて現在世界中の事業者が研究を進めているといいます。「例えばドルと同じ価値の仮想通貨を発行するなど価値を実態のあるもので担保する方法や、仮想通貨の中央銀行を作り価格目標を立てて価値を維持していく方法など、様々な方法が研究されている。どこまでのコストを掛けられるか、どのような信頼を生み出したいか、どこまでのボラティリティ(価格変動)を許容するのかなどによって戦略は変わってくるだろう」(チャールズさん)。