首都圏で導入相次ぐ2階建て車両 ── 全国的には「異色」の存在(鉄道ライター・伊原薫)
かつては東海道新幹線で走行、最新鋭の夜行列車でも採用
ところで、2階建て車両といって忘れてはいけないのが、かつて東海道・山陽新幹線を走っていた100系。国鉄末期、サービス改善のために導入された100系の目玉が2両の2階建て車両でした。1両はグリーン車で、1階部分は新幹線で初めての個室が設けられ、芸能人やVIPの移動に重宝されました。 もう1両は食堂車で、1階部分が厨房、2階部分が客席。大きな窓から景色を眺めつつ食べる食事はなんとも贅沢な味で、2000年の営業終了直前には「食堂車で食事をする」ために多くの人が行列を作ったものです。高速化を進める東海道・山陽新幹線では、2階建て車両は100系のみの歴史でしたが、そのうち1両がJR東海の「リニア・鉄道館」に保存されており、今でも見ることができます。 そしてもう一つ。いまや風前の灯となった夜行列車ですが、その最新車両はいずれも2階建てなのです。JR西日本・JR東海の「サンライズ瀬戸・出雲」と、JR東日本の「カシオペア」がそれで、特に前者は東京と四国・山陰を結ぶ観光需要のほか、上り列車は大阪→東京のビジネス移動にも好評。客室も1人用個室のほかに2人用個室や寝台券不要の「ノビノビ座席」、ミニロビーやシャワー室まであり、2階建てという特性を最大限に活かしています。 首都圏とそれ以外で、その役割がガラッと変わる2階建て車両。より多くの人を運ぶため、より快適な旅を楽しむため、そしてよりよいサービスを提供するため・・・2階建て車両が、これからも進化し広がることを期待します。 (文/伊原薫/鉄道ライター) ■伊原薫(いはら・かおる)大阪府生まれ。京都大学大学院・都市交通政策技術者。(一社)交通環境整備ネットワーク会員。グッズ制作やイベント企画から物書き・監修などに取り組む。都市交通政策や鉄道と地域の活性化にも携わっている。好きなものは103系、キハ30、和田岬線、北千住駅の発車メロディ。