日本文化の高いポテンシャル、経産省との世界調査で明らかに
「ウェルビーイングのテーマパークだ」
■「ウェルビーイングのテーマパークだ」 今回の調査を通じて感じたことがある。それは、欧米の人たち自体の環境の変化が、日本ブランドの価値を高める要因になっているということだ。欧米は、今ウクライナとパレスチナで起こっている凄惨な戦争を日本人よりも身近に感じており、平和で治安が良く、落ち着ける街の環境であること自体が非常に高い価値になっている。 あるいは過度な競争や格差によって精神的に疲弊した人の癒しが日本に向かっているケースもある。欧州は気候変動に対する意識が高く、自然との距離感を見直そうという動きの中で日本人の考えを参考にしようとしている。具体的には、禅への関心の高さ、お寺訪問による精神的な体験、身体的な癒しを提供する温泉の多さ。「日本はウェルビーングのテーマパークだ」と言う外国人も存在した。日本食はベジタリアンやヴィーガン食を想起させるだけでなく、それらと親和性がある。カロリーの高い食事で肥満の多い欧米人にとって、ヘルシーなライフスタイルが日本なのだ。 円安とビザの緩和もあり、行きやすい国に変わったことで、日本に抱いていたイメージが解像度を高めたことが好循環を生み出しているとも言えるだろう。 一方で、海外からの高い評価とは裏腹に、日本を私たちは安く売りすぎているのではないだろうか? 精神性、ライフスタイル、文化コンテンツという3つのレイヤーで、強いブランドイメージを日本はもたれている。このブランドは一朝一夕にしてはできないものだ。ブランドイメージをより強化し、高い価値にして海外に提供していくことができれば、日本のカルチャープレナーにとってのチャンスは世界に広がっていく。そんな可能性に満ちた世界に我々は生きているからこそ、その可能性を形にするカルチャープレナーを増やしていくべきである。それはとても意義のある取り組みなのだ。 佐宗邦威◎東京大学法学部卒、イリノイ工科大学修士課程修了。P&Gでヒット商品のマーケティング、ソニークリエイティブセンターで新規事業創出プログラム立ち上げなどの後、独立。得意分野はハイテクR&Dのコンセプトデザインなど。
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