子どものトラウマは蓄積される。虐待された子どもが長く抱えるトラウマの記憶とは
友だちとトラブルばかり起こしている、大人に対して反抗的、拒食や過食……。こうした「困った子」は、実は本人が困っている子です。過酷な体験で生じた心の傷=「トラウマ」から、問題行動を起こしているのかもしれません。 【漫画】「悪魔の子の証だよ!」新興宗教にハマった母親が娘に言い放った信じ難い一言 わかりにくいのは、なにがあったかを子ども自ら話すことが少ないからです。トラウマは、先の人生に大きな影響を及ぼすことさえあります。ですから周囲は、子どもの回復のためになにができるかを考え、行動していくことが必要です。 そこでこの連載では、『子どものトラウマがよくわかる本』(白川美也子監修、講談社刊)を基にして、当事者はもちろん、子どもにかかわるすべての支援者にも知っておいてほしいことを、全8回にわたってお伝えします。 支援者が子どもや家族をコントロールするのではなく、双方が力を与え合い、この世に生きている幸せを共に感じられる。そんな瞬間を増やすのに役立つヒントをぜひ見つけてください。今回は、子どものトラウマの特徴について解説します。 子どものトラウマがよくわかる 第2回 〈それはSOSのサイン! トラウマを抱えた子どもが「困った子」になる本当の理由〉より続く
養育者のかかわり方が子どものトラウマに大きく影響する
つらい体験によって心身にダメージが現れることは大人にも子どもにもあります。ただ、子どもは発達の途上にあるがゆえに、大人以上にトラウマを負いやすいもの。子ども自身が危険な状態にあることを認識していること、極度の無力感を感じていること、さらにそのときのつらい記憶が保持されることで、トラウマは生じやすくなります。そして、子ども時代に負ったトラウマによる影響は、広く、長く続く傾向があります。 ある出来事が子どもにとってのトラウマになるか否かは、その前後、とくにその出来事を体験したあと、子どもが養育者との関係の支えのなかで安心感を得られるか、心身の状態をほどよく調節できるかが大きく影響します。 イギリスの精神分析家であるウィニコットは、「親子は一つのユニットである」と述べています。ユニットとして親が子どもを適切に調節するプロセスは、子どもが自分で自分を調節するメカニズムとして、徐々に子どものなかに内在化されていきます。養育者自身の安定と、子どもが安心できる関係は、まだ自己調節が十分にできない子どもにとって、つらい出来事の記憶のされ方を左右する重要な要因なのです。 子どもの場合、大人は「これくらいのこと」と思うような出来事であっても、その後のケアのあり方によってはトラウマになりうるのです。そのような意味で、子どものトラウマは累積的な性質をもっているといえます。