子どものトラウマは蓄積される。虐待された子どもが長く抱えるトラウマの記憶とは
過去のつらい出来事が記憶に残ってトラウマになるまで
トラウマは過去のつらい体験によって生じます。トラウマとなるような出来事の記憶は、下記のようにして通常の記憶とは性質の異なる「トラウマ記憶」として残り、日常生活に影響を及ぼし続けます。 いっぽうトラウマ記憶に残らず、単に過去の記憶になっていく場合は、異なるプロセスをたどります。 ★BAD ▼トラウマとなるような出来事を体験する ↓ ▼安心感を得られない 安全基地として機能する人がいない。なにがあったか伝えられない。 ↓ ▼トラウマが残り影響し続ける 体験したことのすべては凍結され、「トラウマ記憶」として残り続け、子どもの心身に影響を与え続けます。 ☆GOOD ▼トラウマとなるような出来事を体験する ↓ ▼重要な他者に調節してもらう 子どもは親などに保護を求めます(アタッチメント行動※次頁を参照)。重要な他者との関係のなかで安心感が得られると、心身の状態は非常時モードから平常モードへと調節されます。 ↓ ▼過去の記憶となっていく つらい思い出として残っても、そのときの感情や感覚は時間がたつうちに薄らいだり、当時とは異なるものに変質していったりします。
幼少期にアタッチメント(愛着)のパターン形成が始まる
先述したように、子どものトラウマは、養育者との関係性が大きく影響します。その養育者との関係性を端的に示すのがアタッチメント(愛着)といわれるもの。 アタッチメントは「特定の対象者との情緒的な絆」とされますが、そもそもは、特定の対象に近づくことで安全・安心を得ようとする生物としての傾向を指し示す言葉です。幼少時、特定の養育者とのかかわりのなかで発達し、そのパターンが決まっていきます。そして、その後、対人関係の基礎ともなっていくものです。 【アタッチメントの成り立ち】 ●子ども 危険・不快な状況におかれたとき、特定の対象に近づく、あるいは呼び寄せるための行動をとる→泣く、しがみつく、後追いする、ほほえむ ●養育者 子どもの要求になんらかのかたちで応じる(養育のスタイル)→抱き上げる、声をかける、ほほえむ、怒鳴る、無視する 上記のように、養育者と子どもとの間でやりとりがくり返されるなかでできあがっていく関係性のあり方を、アタッチメントのパターンといいます。