子どものトラウマは蓄積される。虐待された子どもが長く抱えるトラウマの記憶とは
虐待された子に多くみられる「無秩序・無方向型」は傷が残りやすい
アタッチメントは、恐怖に対応するシステムと連動し、生き残るために保護を求めるシステムです。そのパターンは、子どもが養育者と引き離されたり見知らぬ人に近づかれたりしたときの反応で、4つに分類されます(ストレンジ・シチュエーション法)。 アタッチメントのパターンのうち、最も安心感を得やすいのは「安定型」ですが、「回避型」も「アンビヴァレント型」も、それぞれの養育者との間において安全を確保し、二次的に安心を得るというパターンができています。 このパターンが形成されないのが「無秩序・無方向型」で、虐待された子どもに多くみられます。安心感が得にくいために傷が残りやすく、虐待以外の体験もトラウマ化しやすくなるといえます。 【アタッチメントの4つのパターン】 ●安定型 子どもは泣いていても養育者が近づけば落ち着きます。養育者が子どもの要求にほどよく応じている場合に形成されやすいパターンで、アタッチメント行動が受け入れられる関係のなかで、子どもは安全・安心の双方を得ることができます。 ●アンビヴァレント型 養育者が子どもの要求に気づきにくかったり、自身の都合で対応を変えたりする場合、子どもはアタッチメント行動をとっても安心できません。くっつくことも離れることもできず、泣きながら怒るなど相反する行動を示しつつ、そばにとどまることで安全を確保します。 ●回避型 養育者と離れても泣いたりせず、再会しても近づこうとしません。世話はするが甘やかさない、子どもが泣き叫んでいる場合はむしろ遠ざけるなどアタッチメント行動が受け入れられない場合、子どもはアタッチメント行動を避けながらも養育者のそばにとどまることで、安全を得ています。 ●無秩序・無方向型 アタッチメントの対象である養育者が恐怖の源になっている場合、アタッチメントパターンが形成されません。養育者に近づこうとして固まったりするなどします。 幼児期後期以降は「統制型」に変化し、アタッチメント対象者を攻撃する、あるいは世話をするというかたちでコントロール感を得ます。 〈自責感や自己否定感が強くなる。子どものトラウマが大人より深刻になる重大な理由〉へ続く
白川 美也子(精神科医・臨床心理士)