木枯らしの寒さをはねのけてでも訪れたい展示4選。
ようこそ魅惑の書籍用紙の世界 @市谷の杜 本と活字館
映画は総合芸術なんていわれる。音や映像、デザインや演技など複合的な要素で成り立つからだ。かといって他の芸術に要素がないというわけではない。例えば本はどうだろう。文字や文章だけじゃなくて、表紙や綴じ方、それに紙の質なんてのも本の世界を構成する大事な要素だ。そんな本の大事な要素の一つである書籍用紙に注目したのが本展。目に優しい白さ、めくりやすいしなやかさ、あるいは紙らしいふわっとした手触り、両面に印刷しても透けにくく、そして、長く読まれる本では色褪せしにくい保存性などなど。古今東西、驚くほど多くの種類がある印刷用紙から、書籍本文用として抄紙されたものを中心に、約60種類の紙を紹介する。『市谷の杜 本と活字館』は『大日本印刷株式会社(DNP)』が運営する施設ともあって、入場無料と思えぬ展示の充実ぶりには太鼓判を押したい。 さーて、11月はどんな展示に行こうかな。
インフォメーション
ようこそ魅惑の書籍用紙の世界 会場:市谷の杜 本と活字館 会期:2024年10月19日(土)~2025年02月16日(日) 休み:月曜・火曜(祝日の場合は開館)、年末年始 時間:10:00~18:00 料金:入場無料
安部公房展──21世紀文学の基軸 @神奈川近代文学館
生前は「ノーベル文学賞に最も近い」と言われ、いまや世界文学のひとつといっても過言ではない、安部公房。今年は生誕100年。未完の書『飛ぶ男』やエッセイ・インタビューなどを収めた『死に急ぐ鯨たち・もぐら日記』(どちらも新潮社)などが続々刊行され、映画『箱男』も公開中。記念すべき安部公房イヤーだ。そして、そのラストはこちらの展示でしめくくりたい。本展は、創作活動の初期から、戯曲、写真、演劇グループ・安部公房スタジオによる総合芸術の追究の過程などなど、初公開・初展示を含む約500点の資料により、時代の先端をとらえ続けた表現者・安部公房の全貌に迫る。ワープロやシンセサイザーの展示に「文豪」のお堅いイメージが塗り変わるようで驚きがあるし、どこを切り取ってもやっぱり「前衛」を貫いた安部公房だ。これからの時代にこそ読み解いていくべき作家の、必修の展示。