なぜ横浜DeNAの左腕エース今永昇太は“虎キラー”なのか…駆使した「偽装チェンジアップ」の正体とは?
横浜DeNAは12日、横浜スタジアムで行われた阪神戦に8-1で圧勝した。負ければ対阪神の8年連続負け越しが決定する危機だったが、先発の今永昇太(28)が8回11奪三振1失点の好投で阪神打線を封じ込め今季4勝目をマーク。打ってはタイラー・オースティン(30)の24、25号などで阪神先発のジョー・ガンケル(29)を攻略した。また左腕の田中健次朗(31)がトミー・ジョン手術を経て3年ぶりの復活マウンドを踏みチームの“虎倒”に勢いをつけた。阪神とは残り3試合。阪神にとって巨人、ヤクルトとの直接対決と共に“虎キラー”が揃い始めた横浜DeNAとの対戦が優勝のカギを握ることになるのかもしれない。
8回は続投志願
7回を終えたところでベンチの奥に座る今永に木塚投手コーチから打診があった。 「どうする?」 球数は104球。 今永の頭にふと、木塚投手コーチから投げかけられたことのある言葉が浮かんだ。 「頭を使ってローテーを守れ」というエースの哲学である。 「前日の試合はどうだったのか。中継ぎはどれくらい投げたのか」 今永は「8回もいかせて下さい」と続投を志願した。 「7回で降りることが当たり前になっていた。8回に上がって、真っすぐの質や変化球がどうなるかもチェックしたかったが、ここまで中継ぎもたくさん投げている。木塚さんには以前、“考えて投げてくれ”と言われた。では8回は投げるべきではないか。8回ですべて出し切ろうと思った」 “ハマの番長”にも狙いがあった。 「本人も行く気満々。近本に3本打たれた後だったので、あのまま終わるより、抑えた方が今後のためによかった」 昨年から対阪神4連勝の今永だが、ただ一人近本にカモにされていた。まだ対阪神は10月5日からの3連戦が残っている。次への布石を考えると好印象のまま終わらせるのはアウトだ。 今永は、近本を145キロのストレートで二塁ゴロに封じ込み、3人でピシャリと抑え、9回のシャッケルフォードにバトンを渡した。 事実上のゼロ封だった。 初回にピンチを迎えた。先頭の近本に二塁打を許し、中野にバントで送られ一死三塁で3番に起用されたサンズを迎える。まだ初回。1点より大量失点が怖いここは、セオリーでは内野は定位置である。だが、ベイスターズベンチは、今永への信頼度を示すかのように1点もやらない前進守備を敷いた。サンズには追い込んでインローにクロスファイアー。サンズは中途半端にバットを止め見逃しの三振。犠飛も前進守備の間を抜くゴロも打たせなかった。二死となってマルテもショートゴロに打ち取った。だが、捕球後、半転した柴田が、判断を見誤った。余裕を持ちすぎて送球がワンテンポ遅れ、タイムリー内野安打にしてしまったのである。 さらに大山には外角のチェンジアップをバットの先で捉えられ右中間に二塁打を打たれた。だが、ここからの今永がクレバーだった。 「初回にチェンジアップを見切られていたので真っすぐ、フォークに切り替えた」 マルテにも大山にも打たれたのはチェンジアップである。 続く糸原は、ストレートで追い込み、スライダーを挟んで最後もストレート。チェンジアップを使わずショートゴロに打ち取ってみせる。 察知能力、修正能力に優れる今永は、「見逃し方ですね。強引に引っ張ろうとせず、もぐりこんで打とうという意図が見えた」と、阪神打線のチェンジアップ狙いを見抜き、「その後はチェンジアップを見せ球にした」という。