なぜ横浜DeNAの左腕エース今永昇太は“虎キラー”なのか…駆使した「偽装チェンジアップ」の正体とは?
今永は、それを「フォーク」と呼んでいるらしいが、正確に言えば、握りは同じの2種類のチェンジアップを駆使したのである。完全に抜くチェンジアップと、それより5キロほど速く鋭く落ちるチェンジアップ。軌道と速度が違う。 今永いわく「握りは同じで薬指に力をいれるか、中指に力を入れるかの違い」というほど繊細なテクニックで使い分けた。 「偽装チェンジアップのイメージだった」という「フォーク」で阪神打線を幻惑させていく。5回の梅野、6回の大山から奪った三振は、いずれも、その140、141キロの「偽装チェンジアップ」である。「調子も良かった」という伸びのあるストレートを軸に阪神打線を圧倒。8回を毎回の11三振、6安打1失点にまとめた。 「打者の皆さんに感謝しています」 今永は、お立ち台でそう口にした。 昨年オフの肩のクリーニング手術から、リハビリ期間、2軍での調整登板を経て復帰後、2か月間、白星から見放されていた。 「自分がいいピッチングをしても勝てないのには原因がある。自分に何ができたか、自分がすべきことは何だったかを考えていた。最後は誰かに助けられないと勝ちはつかない。日頃から、今永のためになんとかしてあげたい。と思ってもらえる選手にならないといけない、それを考えながら2か月を過ごしていた」 その思いが打線に伝わった。 大量得点を奪ってガンケルを攻略、今永を援護したのである。坪井打撃コーチの「両サイドにいい球が来ているので、中途半端にならず自分の考えを決め打席に向うこと。低めは我慢しゾーンを上げ甘い球は一振りで捉えてほしい」という指示が的確だった。 球威に欠けたガンケルの浮いたボールに対して積極的に仕掛け、すぐさま1回裏に佐野が、ライトへ特大の12号逆転2ラン。そして、立ちはだかったのは、打率.327で首位打者をキープする4番のオースティンである。 3回二死三塁から24号2ランをバックスクリーンの左に放り込むと、7回には無死一、二塁から2番手馬場の“逆球”を見逃さない。バックスクリーンの左に特大の25号3ラン。2発、5打点の固め打ちである。 「1本目は三振しないように。2本目は何かを起こそうと思った結果だ」 お立ち台でオースティンは振り返った。 関西のスポーツ紙の報道によると、試合後、矢野監督は「うちがやられているときはオースティンにやられている」と語ったそうだが、今季は、対阪神に打率.383、8本塁打、18打点と滅多打ちである。 三浦監督は、9回に「条件が整えば9回ワンアウトを投げさせたいと決めていた」と、シャッケルフォードが2死を取ると、田中健の名前を告げた。2019年にトミー・ジョン手術を行い、育成契約になりながらも、長いリハビリに耐え、復活してきた左腕。2018年9月16日の阪神戦以来、3年ぶりのマウンドである。緊張からか、代打の原口は歩かせたが、小野寺をフォークで投ゴロに打ち取ってゲームセット。 ベンチで三浦監督は「ナイスピッチング!お帰り」と言葉をかけて出迎えた。