福島県に最も多い名字「橋本」。日本に「橋」のつく名字が多くあるのはなぜ?
橋本(はしもと)
「橋」のつく名字は多くあります。名字ランキングを見ても、第3位の「高橋」を筆頭に、200位までに「橋本」「大橋」「石橋」と4つも入っています。なぜ多いかというと、古い時代、橋はランドマークだったからです。 橋などどこにでもあるだろう、というのは現代人の感覚。江戸時代でも、江戸、京、大坂、名古屋といった大都市や東海道などを除くと常設の橋は少なく、川は渡し船で渡るものだったのです。 名字が生まれたのはそれよりももっと古い時代で、橋の架かっているところは珍しく、「橋」というだけで場所を特定することができました。 また、「橋」は人が集まる場所でもありました。川を渡るには船よりも橋が便利で、自然に橋のあるところに人が集まってくる。「橋本」とはそうした「橋のたもと」を指し、そこは人が集まる一等地であったに違いありません。 現在、「橋本」は沖縄を除いて全国にまんべんなく広がっています。なかでも福島県に最も多く、県内では郡山市に集中している他、三春町では最多名字となっています。
森岡浩/Hiroshi Morioka
姓氏研究家 1961年高知県生まれ。早稲田大学政経学部在学中から独学で名字の研究をはじめる。長い歴史をもち、不明なことも多い名字の世界を、歴史学や地名学、民俗学などさまざまな分野からの多角的なアプローチで追求し、文献だけにとらわれない研究を続けている。著書は「全国名字大辞典」など多数。
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