アートからスーパーカーへ|「AND OWNERS」が切り拓く共同保有の新時代
日本のアート業界に新風を巻き起こしてきた株式会社AND ART(アンドアート)が、2024年7月16日、大きな転換点を迎えた。社名を「AND OWNERS(アンドオーナーズ)」に変更し、サービス名を「&OWNERS」としてリニューアルを果たした。この動きは、アート作品の共同保有という革新的なコンセプトを、スーパーカーを含む幅広い「実物資産」へと拡大する野心的な戦略の一環だ。 【画像】「共同保有」のコンセプトで、1枠10万円から憧れのランボルギーニオーナーになれるサービスが発表(写真7点) AND OWNERSの代表取締役、松園詩織氏は「テクノロジーで、アートと社会を結び、拓く」というビジョンを掲げ、2019年に日本初のアート共同保有プラットフォーム「ANDART」をスタート。当初1枠1万円(税別)という手頃な価格設定で、ピカソやバンクシーといった世界的アーティストの作品、47作品を少額投資により共同保有でき、さらにその共有持分権をサービス内で売買することができるということで注目を集めた。 この革新的なアプローチは従来、高額で敷居の高かったアート投資の世界に、より多くの人々が参加できるようになったという点でまったく新しい顧客開拓に成功している。そして今回のリニューアルで、AND OWNERSはその視野をさらに広げ、スーパーカー、ワイン、ウイスキー、高級時計といった「実物資産」全般へと拡げる展望を発表した。 注目すべきはサービスのリニューアル第一弾として発表された2台のランボルギーニ。「ランボルギーニ・ミウラ P400」と「ランボルギーニ・カウンタック 25thアニバーサリー」という至宝の2台を、それぞれ1枠10万円(税込)から共同保有できるというのだ。 この動きは、スーパーカー市場の近年の動向と密接に関連している。本メディアの読者の皆様であればご承知のとおり、高級スーパーカーはいまやアート作品と同様に、その希少性と歴史的価値から投資対象として注目を集めている。特に今回取り扱われる2台は、その希少性と歴史的意義において群を抜いている。 「ミウラ P400」は、1967年製造の124台限定モデルの80番目。"スーパーカー"というカテゴリーを生み出したとされる伝説的な車両だ。一方の「カウンタック 25thアニバーサリー」は、ランボルギーニ社25周年を記念して1989年に製造された最終モデルで、走行距離わずか3,400kmという驚異的な保存状態を誇る。 これらの車両の市場価値は近年急速に上昇している。スーパーカー市場の権威あるインデックス、「Hagerty's Blue Chip」によれば、過去10年間でスーパーカーの価値は平均して約60%上昇している。特にランボルギーニのような希少性の高いモデルは、その上昇率をさらに上回ることも珍しくない。 なんと3台目のランボルギーニの所有計画も進んでいる。モニターに投影されたのは「ディアブロGTR」の17台目。こちらも近日中にお披露目されるそう。 AND OWNERSの新たな取り組みは、このようなスーパーカー市場の潮流を巧みに捉えたものと言える。従来、富裕層やプロのコレクターのみがアクセスできたこの市場を、より広い層に開放する試みだ。 しかし、この取り組みには課題もある。アート作品と違い、スーパーカーには維持管理のコストがかかる。また、その価値は市場動向だけでなく、保管状態にも大きく左右される。AND OWNERSがこれらの課題をどのように克服し、投資家の利益を守るのか、今後の展開が注目される。 一方で、この新サービスが持つ可能性は計り知れない。スーパーカーやアート作品といった「実物資産」への投資は、株式や債券とは異なるリスク・リターン特性を持つ。ポートフォリオの分散という観点からも、個人投資家にとって魅力的な選択肢となり得るだろう。 さらに、この取り組みは単なる投資機会の提供にとどまらない。今回の新サービス発表の壇上で、代表の松園氏からは「共同保有するオーナーが集う会などの開催も今後視野に入れている」との話があった。これは、同様の趣味趣向を持つコミュニティの形成を通じて、投資とカルチャーを融合させる新たな試みとも言える。 アートとテクノロジーの融合から始まったAND OWNERSの挑戦は、今や「実物資産」全般へと拡大し、投資の概念を根本から変えようとしている。この新たな取り組みが、日本のスーパーカーマーケットに、そして資産運用市場にどのような影響を与えるのか、今後の展開が大いに注目される。 文:前田陽一郎 写真:AND OWNERS Words: Yoichiro MAEDA Photography: AND OWNERS
Octane Japan 編集部