新型ドグマF試乗記“F世代”の集大成|PINARELLO
新型ドグマF試乗記“F世代”の集大成|PINARELLO
ツール・ド・フランス、そしてオリンピックを前にモデルチェンジをしたピナレロのドグマ。そのモデルチェンジ。しかし、正直車名の変更はなく、見た目も前作に酷似している。ここでは自転車ジャーナリストの安井行生が試乗、第1世代のドグマFと新型、第2世代のドグマFの違いをレビューする。
さすが高級車
試乗車を大きな箱から出した瞬間、高級感にしばしポーっとなった。試乗車のカラーはLUXTER BLUE。青から紫へと変化する偏光性塗装はともすれば下品になってしまうものだが、本車のそれは彩度がそれほど高くなく上品だ。クリア層は凹凸の細かいセミマット。この色で艶ありにするとギラギラしすぎてしまうだろうし、マットが強すぎるとフレーム形状の輪郭がぼやけてしまうだろう。色味にしろマット具合にしろ、入念に吟味されたものだと思う。 意地悪くフレームの隅々まで凝視したが、フレーム表面の平滑度は非常に高く、塗装の粗もない。自転車に明るくない人が見ても明らかに高級なものだと分からせる外観の仕立て。装着すれば傷つくと分かっていながらシートポストまでフレームと同色で塗ってしまうあたり、イタリアの伊達を感じる。シートポストが真っ黒になるだけでこの高級感は半減してしまうだろう。さすが。 高級車だから気を遣うというわけではないが、信号待ちでうっかりトップチューブに腰掛けて砂粒や埃でクリア層のマット仕上げを変形させてしまわないように注意しながら走り出す。 「硬くなった」という評価が多いという噂を聞いていたから内心かなりビビっていたが、意外にも脚を跳ね返すような刺々しさはなく、ペダルがスルリスルリと落ちていく。その結果、軽快に加速してくれる。カンパニョーロのカーボンクランクや新型ボーラとの相性がよかったことも影響しているだろうが。 ただこれは剛性感の話であって、実際の剛性値は高く、貧脚ながら力んでみると、フレームの芯には絶対不動の強固な土台があることが分かる。いくら踏んづけてもフレームの限界は遥か高みにある。 もちろん、「低負荷のときは柔らかく、入力が大きくなると剛性が上がる」なんてことは工学的にありえないから、ペダルの入力方向による剛性の違いがペダリングフィールとして表出したものだと思う。 ハンドリングは低速域ではヒラヒラと落ち着かないが、高速域になるとビシッと安定するようになる。レーシングフレームだからこの仕立てでよい。 専用ハンドルだが、個人的には握りやすく不満はなかった。ただ、コラム断面を楕円としたことで、ノーマルステムは付けられなくなってしまった。ポジション自由度としては下がったことになるが、ステム長80~140mm、ハンドル幅340-400~400-460mmとサイズラインナップが比較的豊富なので、「合わなくてどうにもならない」というケースは少ないのかもしれない。