AKB48会いに行けるアイドルも区切りの時期か 求められる賢さ
AKB48も最後の1期生・峯岸みなみが先月卒業し、一つの区切りがついた感がある。また2005年12月のAKB48劇場オープン以降、新しいアイドルのスタイルとして“会いに行けるアイドル”を標榜してきた同グループだが、昨年からコロナ禍によってライブエンターテイメントが大きなダメージを受け、ファンがアイドルに“会いに行く”のもままならない状況になってしまった。AKB48そしてアイドルはどう変わっていくのだろうか。
時代移り変わっても豊富な楽曲は宝か
「某TV局の方が『アイドルというものは5年かけて上がれたら、下がるんだよね5年かけて』とおっしゃっていましたが…AKB48はある意味、稀有なアイドルグループだと思います。“一世を風靡した”感もありつつ、10年以上前のグループの楽曲を歌い継ぐことができていますからね。グループを構成しているメンバーは入れ替わりを繰り返し、残念ながら現在は世間一般的な感覚として“顔と名前が一致するメンバー”はずいぶん減ってしまったことは否めない事実だと思います。でもAKB48の“楽曲は知っている”という人は少なくないでしょう。これはやはり大きな宝であり魅力だと思います」(アイドル情報メディアの40代女性編集者) 確かにAKB48はこれまでの歴史の中で数多くの楽曲を歌ってきて、NHK朝ドラの主題歌もあれば卒業ソング、恋愛ソングなどさまざまなジャンルで定番ともいえるヒットナンバーを送り出してきた。AKB48に限ったことではないが、メンバーチェンジによる新陳代謝を繰り返して“鮮度”を維持するグループアイドルにとっては、多くの人に親しまれてきた過去の楽曲群は大きな財産といえるのだろう。 「それを“懐メロ”と揶揄する人もいるかもしれませんがこのご時世、この環境下、楽曲を取り巻く環境が激変する中で、気軽に口ずさめる曲が多数あるということは貴重だと思います」(前出・編集者)
コロナ禍で大きなダメージ これからのアイドル像は
一方で、AKB48がそのコンセプトとして掲げてきた「会いに行けるアイドル」あるいはチーム8の「会いに行くアイドル」といったものは、少なくともこのコロナ禍においては成立しにくい現状がある。 「以前のような日常に戻れるかどうかは、まだ誰にもわからない状況ですよね。そんな中でニューノーマル、リモート、オンラインなどという言葉が日常にあふれてきて、ライブ的なものが制限されている状況がある種の基準になってきたことを痛感せざるを得ません。そういう意味ではこれらをうまく利用する、または逆手に取った者が残っていくんでしょうね」としみじみ話すのは、元大手プロダクションの60代男性マネージャーTさんだ。続けてTさんは、これからはグループアイドルであってもより賢いメンバーしか生き残ることは難しいのでは、と指摘する。 「可愛ければいい、ファンの気持ちを満たしてくれればいい…だけではなく、これまで以上に“賢さ”が必要になってきています。口の堅さを含め、とことんアイドルとしての自分を演じきれるか。あざといと言われても、熱愛遍歴がメディアに報道されたとしても、ですね。メディアのスクープやSNSの普及でアイドル=憧れ・偶像というイメージを保持することは甚だ困難な時代になってきました。一般大衆も必ずしも清廉潔白であることばかりを求めてはいないと思います。ただ、露呈してしまったことを許容できるかどうか、それだけ相手に情を寄せられるかどうか。このあたりがますますシビアになっていくでしょうね」 現実に会って言葉を交わし握手するというスキンシップ的な部分が制限されるとなると、やはりそこは楽曲の良さやSNSの使い方のうまさなどを含めアイドル本人への感情移入をどう導いていくかが一層大事な要素になりそうだ。アイドルというジャンルにおいて、とくに日本ではいつの時代もそれに憧れを抱く少年少女や、そこに癒やしや嗜好を求める一般大衆が存在することは、今までもこれからも変わらない部分ではないだろうか。 (文:志和浩司)