ジョー・バイデン、背番号15。~大統領は若き日にラグビーをたしなんだ~
4年前。演説会場の聴衆の前に小走りで現れた。年配者なのに身のこなしが美しい。たまたまニュース映像で目にして直感が働いた。「この人は運動部できっとレギュラーだった」。さっそくパソコンのふたを開いて調べる。的中。若き日のジョー・バイデンは上々のアスリートだった。
デラウェア州のアーチミア・アカデミー高校でフットボール、すなわちアメリカン・フットボール部のワイドレシーバーを務めた。1960年のシーズンには好調のチームで10度のタッチダウンに成功している。当時の監督、ジョン・ウォルシュは「彼(バイデン)はわが16年の指導歴における最優秀のレシーバーのひとり」(ニューヨーク・タイムズ)と認めた。元クォーターバックのビル・ピーターマンの証言。「わたしはタッチダウンにつながるパスをジョーに20回投げた。そのうちの19回を彼はつかんだ」(ESPN)。上手だったのだ。
いくらか時を進めて、1974年11月23日のアイルランド・ダブリン。かのランズダウン・ロード競技場のどこかに新進の政治家、バイデンの姿はあった。こちらは同じ楕円のフットボールでもそのボールがひとまわり太い競技のスタジアムである。
ラグビーのアイルランドはオールブラックスと対戦、6ー15で敗れた。「雨。グラウンドはヘビー」と記録に残る午後、のちの超大国の大統領も「35000」の観衆のひとりに過ぎなかった。
2016年7月。ジョー・バイデンは当時のオバマ政権の副大統領の立場でニュージーランドを訪れる。現地でオールブラックスのジェローム・カイノらと面会している。そこで一言。
「わたしがこの地を訪問した本当の理由はこれです」 ホワイトハウスのアーカイブにレコードは保存されていた。トヨタ自動車にも在籍したカイノが言った。「あなたはフルバックであったと聞いています」。73歳のバイデンは「そのとおり」と答え、こう述べた。