4モーターで内燃機関を超える悪路走破性をゲット メルセデス・ベンツGクラスにEVのG580 with EQテクノロジーが登場
発売記念のエディション1から導入開始
メルセデス・ベンツは2024年10月23日にGクラスの電気自動車=バッテリーEV(BEV)版となる「G580 with EQテクノロジー・エディション1」の日本での発表を行った。 【写真36枚】新型メルセデス・ベンツGクラスに設定されたEVモデル、「G580 with EQテクノロジー・エディション1」の詳細画像をチェック ◆2018年に登場した3代目ベース 1990年の登場から長いモデルライフを誇った2代目Gクラス(とはいえ、その基本は実質的に1979年のデビューから変わっていないが)から現行の3代目に変わったのは2018年。新設計のラダーフレーム・シャシー、フロント・ダブルウィッシュボーン式サスペンション、約170kg軽量化され新デザインとなったボディ、9段ATの採用など、誕生以来初と言っていい、大規模なフルモデルチェンジを受けた。 ◆型式番号をW465に更新 しかし、メルセデスの社内で用いられる型式番号はW463のままだった。ところが、今回のG580 with EQテクノロジーでは、見た目こそ3代目Gクラスと何も変わっていないが、型式番号がW465へと更新されることになった。 その最大の要因となっているのが、電動化されたパワートレインだ。G580 with EQテクノロジーは、1基あたり最大出力147ps、最大トルク291Nmを発生する永久磁石同期モーターを前後アクスルに2基ずつ計4基搭載し、それぞれ4つのホイールを駆動。システム最大で587ps、1164Nmを発生するほか、各モーターに2段ギアを内包し、ローレンジ・モードでは最終減速比を2:1とすることで、急勾配走行時のトルクを強化。またトルクベクタリングを用いた仮想デフロック機構を備えて入り、オンロード、オフロード問わずあらゆる環境、シチュエーションで柔軟に最大のトラクションを生み出すことが可能になっている。 ◆重機のようにその場で旋回 さらにこの機能を活かし、オフロードなどの未舗装路で最大2回転までその場で旋回、いわゆる超信地旋回ができる「G-ターン」と、内側後輪を中心に旋回させ、大幅に回転半径を縮小できる「G-ステアリング」という、大型SUVの固定概念を根底から崩すような新機能も搭載している。 G-ターンは、センターコンソールにあるスイッチで右回転か左回転かを決め、ステアリングはまっすぐでパドルシフトを引きながらアクセル・ペダルを踏むと最大2回転する。アクセル・ペダル、もしくはパドルを離せば好きな角度で止めることができる。何度かデモンストレーションを見せてもらったのだが「思っていた以上に速い」というのが正直な印象。聞けば、1度につき2回転だが、回数のリミットは特に設けられていないそうだ。 「行き止まりになった山道など緊急回避的に使うもので、スーパーマーケットの駐車場で使うものじゃありませんからね(笑)」なお、G-ターンとG-ステアリングは公道での使用禁止が謳われている。 ◆216セル、116kWhのバッテリー それら電動化を支えるリチウムイオン・バッテリーの最大容量は116kWh。216個のセルを納めた12のモジュールで構成されたバッテリーは、専用に強化されたラダーフレームの内側に重量バランスを考慮して2段重ねで搭載。車体の低重心化、車体剛性の強化に寄与する一方でモーターともどもしっかりと防水処理が施されているため、最大渡河深度はG450dの700mmから850mmへと向上しているのも特徴だ。 気になる航続距離は530km(WLTCモード)。充電に関しては最大6kWの200V普通充電、最大150kWのチャデモ式急速充電に対応可能で、150kWの急速充電機を使った場合、41分で10%の状態から80%にできるという。 今回の発表会では、併せてメルセデス・ベンツ・ハイパワー・チャージング日本合同会社が設立され、パワーエックス社の協力で、今後2年間に全国で25拠点、100口の高出力EV充電ネットワークが構築されることも発表されている。 ◆内燃機関モデルと同じデザイン 今回のために来日したGクラスのプロダクト・マネージャー、トニ・メンテル氏に直接G580 with EQテクノロジーを解説してもらったのだが、まず導入されるエディション1のグリルはICE(内燃機関)モデルのG450dと同じデザインとなっており、電飾が内蔵されたブラックのEQ専用のスペシャル・グリルは2025年の第一四半期から導入されるという。 そのほかのエクステリアに関しては、一見G450dと見分けることが難しいほど、主要パネルやガラスなどは同一のものが使われている。ただし、BEV化にあたりドラッグの低減を目的にボンネット・フードを一段斜めに上げてあるほか、ウインド・シールドのフラッシュサーフェイス化、ホイールハウス内のタービュランスを整流するリア・フェンダーのエア・スリット、ドア開閉時の圧力を抜くCピラーのエア・アウトレット、フルフラットになったアンダートレイを採用しているのが識別点だ。 インテリアはバッテリーなどのために荷室のフロアが1.5cmほど高くなっているものの、使い勝手に差異はなく、基本的に同一。インパネもG-ターンのスイッチが追加されていることと、ステッチなどの装飾以外は、G450dと変わらない。 ◆高強度でバッテリーを守る フラットのフロアパネルは板厚26mmの頑丈なもので、5cm角の板を当てて車両を持ち上げても問題ないだけでなく10トンの重みに耐えられるほどの強度を持つ。それにもかかわらず、フロアの重量は57kgに抑えられている。 また、フロアとラダーフレーム内に敷き詰められたバッテリーとの間に1.5cmの隙間を設けることで、万が一、荒路走行時にフロアをヒットしてもバッテリーへダメージが及ぶのを防いでいるのもポイントである。 ◆車両重量は3トン超 さて、ここで1つ気になるのはBEV化によってどのくらい車重が増えたかということだ。スペックシートを見るとその車両重量は3120kgと、G450dより560kgも増えている。メンテル氏によるとヨーロッパでは車重が3.5トンを超えるとトラックの免許証が必要になってしまうので、5人乗りを維持しながらその範囲に収まるよう、できるだけ軽くしようと努力が払われているという。 G580 with EQテクノロジー・エディション1のタイヤ・サイズは前後とも275/50R20。オプションで265/60R18のオフロードタイヤの設定もあるが、いずれもICEモデルと同じサイズで、オーバー3トンの車重にも耐えられるとメンテル氏は説明してくれた。 2024年11月からデリバリーがスタートするというG580 with EQテクノロジー・エディション1の販売価格は2635万円(税込)。ステアリング位置は右、左の両方が選べるようになっている。 文=藤原よしお (ENGINE WEBオリジナル)
藤原よしお