どうすれば子がトップアスリートに育つ? 元日本代表・城彰二の答え「正解は1つじゃないけれど…」
◆自分で考え、行動に移せる人に
その一方で、夢をつかみ取るには、「自分で考えること」が不可欠だとも力説する。自身がそうやって、考えながら成長してきたように。 「僕は、子育てに関してはほぼ妻任せで、息子と一緒にボールを蹴ったことも、たしか小さい頃に公園で3回くらい(笑)。本格的にサッカーを始めてからも技術的な指導をしたことは1度もありません。たまにサッカーに関する悩みを相談されますが、その時もいくつか道を示すだけで、答えは与えない。結局、自分で判断し、自分で行動しなければ、何事も自分のものにはならないんです。 お金がなければスーパーで安い食料を探すし、朝早く起きて新聞配達もするわけです(笑)。そうやって困ったり、悩んだりした時に、自分で考えて行動に移せる人になること。あとは、他人に思いやりを持てる人間になること。望むのはそれだけですね」
◆子どもと一緒に夢を追いかけるのはすてきだけど……
ただ、世の中には自分の子どもに必要以上に期待し、多くを望む親も少なくない。サッカースクールの現場でも、最近は熱心な保護者が多いと城は言う。 「親が子どもと一緒になって夢を追いかけるのは、すごくすてきなことだと思います。だけど、例えば何時間も一緒にビデオを観て、このプレーはこうだった、ああだったと指摘していたら、子どもは滅入ってサッカーを楽しめなくなってしまう。なんだって楽しいからこそ継続できるんですよね。僕も鹿実の練習は本当にきつかったけど、それでも辞めなかったのは、根っこの部分でサッカーを楽しんでいたからなんです」
◆「ずば抜けたもの」を見つけて、伸ばしてあげればいい
では今の時代、どのような子育てをすれば、プロの世界で成功するようなトップアスリートは育つのか。 「正解は1つじゃないと思います。周りの環境やタイミング、もちろん子どもの性格も関係してくるでしょう。ただ、親の思い込みで勝手に子どもの能力を評価してしまうのは、特に過大評価をして過度なプレッシャーを与えてしまうのは、ちょっと違うんじゃないかと。トップアスリートになれるかどうかは、結局のところ子どもの能力次第であって、親の能力ではないんですから。 でも、いろんなアスリートの方と話をしていると、やはり何か特化した武器を持っている人が多いなって気付きますね。それは運動能力や技術に限らず、発想の豊かさでも強い精神力でもいんです。何か1つずば抜けたものがある人は、きっとどんな世界でも成功できるんじゃないかと思うんです。 だから、できないことをできるようにすることも大事ですけど、それ以上にその子の得意な分野、突出した武器を見つけてあげて、それを楽しみながら伸ばしていけるような環境を与えてあげること。そんなサポートが、僕は1番いいのかなって思いますね」