どうすれば子がトップアスリートに育つ? 元日本代表・城彰二の答え「正解は1つじゃないけれど…」
◆子どもたちは、やりたいことを自由にやればいい
では、そうして両親から受けてきた教育を、自身の子育てにはどのような形で生かしているのだろうか。スパルタとも言える、ある種の突き放すような教育がなければ、「考える力」は育まれないのだろうか。城は、即座に否定する。 「僕が育ったのは、言葉よりも先にモノが飛んでくるような時代でしたからね。自分が経験してきて、それは違うなって思ったし、何より今の時代にそぐわない。もちろん、人に迷惑をかけたりしたら、僕も子どもたちを叱りますけど、特に家庭内で決まりごともつくらないし、彼らがやりたいことを自由にやればいいという考え方ですね」 20歳になった長女は、徒競走でも周りの子を先に行かせるようなおっとりとした性格だという。ただ、幼い頃から人前に出ることが好きで、度胸は満点。ミュージカルやタップダンスをやっていた延長線上で、現在はタレントとしても活動するようになった。 一方、中学3年生の長男は、大の負けず嫌い。現在はFC東京 U-15むさしでプレーしているが、試合に負ければ今でも泣いて悔しがるそうだ。ただ、その長男にも無理強いしてサッカーをやらせたわけではない。実際、小学3年生まではお姉さんの影響でダンスにハマっていたという。 「4年生になって、いきなりサッカーをやりたいって言い出して。まあ、僕としてはやりたければやれば? というスタンスです。まだまだ、全然下手くそですしね(笑)」 城の評価は厳しいが、それでも才能は父親譲りなのだろう。城がスポーツディレクターを務めるインテルアカデミー・ジャパン(イタリアの名門インテルが運営するサッカースクールの日本支部)のスクールでボールを蹴り始めると、早くも5年生の時にFC東京のスカウトの目にとまる。そのプレースタイルは祖父譲りなのか、城いわく「破天荒」だ。 「バーンってボールを蹴って、ガーッて走る(笑)。足が速いのと、あとは左利きという点をFC東京さんに評価していただいたんだと思います」 ただこの先、自分と同じようにプロになってほしいのかと問えば、それもあっさりと否定する。 「ならなくてもいいし、なって欲しいとも思っていません。娘についてもそうですが、将来こんな大人になってくれたらいいなという願望は一切ないんですよね。ただ、彼ら自身が『こうなりたい』という目標や夢は絶対に持って欲しい。そこに向かってチャレンジして、仮につかめなければ、また違う目標を見つければいい。親としては、例えば金銭的な部分や食事面などで、その手助けをするだけです」