「酔いにくい飲み方は?」「おつまみは何がいい?」「二日酔いのときはどうしたら?」忘年会にまつわる素朴な疑問を管理栄養士に聞いた!家飲みおすすめレシピも
すでに多数の忘年会に参加したという人や、12月になるとどうしても飲み会が増えるという人も多いのでは?そこで今回は、お酒を飲むときに気を付けることや、おつまみの選び方、二日酔い対策などについて、「認定栄養ケア・ステーション食サポ」の代表で管理栄養士の西山愛さんに話を聞いた。 【写真】家飲み最強おつまみ!?タコのアヒージョ ――飲み会前に摂ったほうがよい食べ物・飲み物はありますか? 【西山】肝機能サポートのドリンクを飲むのもいいと思うのですが、大事なのは「空腹のまま飲み会に行かない」ということです。もし何か食べられるのであれば、オルニチンやタウリンが入っているものを選びましょう。オルニチンはしじみやチーズ・キノコ類・マグロなどに、タウリンはホタテ・牡蠣・ハマグリなどの貝類や、イカ・タコ・エビなど魚介類に含まれています。 ――その日の夜に飲み会があるなら、ランチなどで今伺ったような食材が入ったものを食べたほうがいいのでしょうか? 【西山】できれば、直前に食べるほうがよいと思います。お昼に食べたものだと、消化してしまうので…。なので、もし直前に食べられなくても、先ほど挙げたような食材が含まれたメニューをおつまみとして食べてもいいと思います。 ただ、メニューが決まっていたり選べない場合は事前に肝機能サポートのドリンクを飲んだり、オルニチンやタウリンを含んだ手軽に食べられるもの(しじみ味噌汁やチーズなど)を摂っておくといいですね。 ――ちなみに、オルニチンやタウリンはどんな働きをするのでしょうか? 【西山】どちらも肝臓の機能を高めて、アルコールの分解を助けてくれます。しじみに含まれるオルニチン量はほかの食材に比べると圧倒的に多いので、しじみ汁などはやはりおすすめですね。タウリンもオルニチンも水に溶けるので、生で食べるかスープごと食してもらうのがよいと思います。 ――となると、飲み会でもし選べるなら、海鮮鍋などを選んだほうがいいんですね。 【西山】そうですね、牡蠣鍋など海鮮系の鍋だと、海鮮自体も食べられるし、スープに溶けだしたエキスもシメ(の麺や雑炊等)でいただけて、いいと思います。 ――飲み会が続くと食生活が乱れがちになりますが、そういうときに気を付けたほうがいいことはありますか? 【西山】飲み会が続くと、どうしても揚げ物が多くなったり、糖分や脂質が増えて野菜が少なめになってしまったりなど、栄養が偏るまたは摂り過ぎになります。なので、朝昼の食事で調整をするのがベストです。たとえば、夜は飲み会でしっかり食べるだろうと予想できる場合は朝昼は量を控えめにしてみたり、飲み会のメニューがわかっていて野菜が不足しそうであれば、朝昼で野菜を摂っておくとよいでしょう。 もし、飲み会で食べ過ぎてしまいそうなときは、暴飲暴食を防ぐために事前にサンドイッチやおにぎりなどを食べておくのも手です。揚げ物など高カロリーなメニューが多そうな場合は、事前にカロリーの低いサラダチキンなどを食べておくといいと思います。 ――栄養が偏ると、どんな弊害があるでしょうか? 【西山】体重が増加してきたり、免疫や体力に影響して風邪をひきやすくなったりもすると思います。 ちなみに、先ほど「飲み会では揚げ物が多い」という話をしましたが、揚げ物は脂質を多く含んでいて、脂質は分解されるのに時間がかかります。そうなると胃腸に負担がかかってアルコールの分解にも影響し、より二日酔いになりやすくなるので、脂質が多い食べ物の食べ過ぎには特に注意してください。 ――もし、飲み会でメニューが選べるなら、どういうものが理想的でしょうか? 【西山】そうですね、揚げ物はなるべく避けてもらって、サラダ、チーズ、魚介類のお刺身などでしょうか。先ほど挙がった、海鮮系の鍋もいいと思います。鍋の場合、シメはうどんや雑炊のほうが消化が早いのでおすすめです。逆に、シメでラーメンは避けた方がいいかもしれません。シメにラーメンを入れる(組み合わせる)ということは、こってりしたスープ(鍋)で脂質を含むことが多いので、胃腸に負担がかかりやすいかなと思います。 ――酔いにくくする、お酒の飲み方はありますか? 【西山】アルコール度数の少ないものを飲んだり、量を少なめにすると、もちろん酔いにくいですが、どうしても長時間付き合わないといけない場合などは、合間でノンアルコールのものを飲むといいと思います。血液中のアルコール濃度が急激に高まることを防いでくれます。 ――飲み会後に摂ったほうがいい食材などはありますか? 【西山】飲んだあとは脱水状態になっていたり、血中のアルコール濃度が高くなっていたりするので、まずはしっかり水分を摂ってほしいです。できれば、脱水に加えて糖分補給もしてほしいので、スポーツドリンクやビタミン補給も含めて果汁(ジュース)もおすすめです。 ちなみに、スポーツドリンクなどを飲んだときに味がしない場合は、脱水を起こしている可能性が高いので、そのときは特にしっかり水分を摂ってください。そうすると、翌朝がだいぶ楽になると思います。 ――お酒は「水分を補給している」ことにはならないんですね。 【西山】アルコール自体に利尿作用があるので水分を排出してしまいます。お酒を飲んでいると何度もトイレに行きたくなるのは、そういうことです。血管の中も脱水状態になってアルコール濃度も高まってしまうので、アルコールが入ってないもので水分補給をしましょう。 ――飲み会では、お酒に加えて鍋のシメで麺やご飯を食べたり…と、わりと糖質を摂るイメージがあるのですが、そのあとさらに糖分が含まれているスポーツドリンクや果汁を飲むと糖分の摂り過ぎにはならないのでしょうか? 【西山】アルコールを分解する際に、一時的に血糖値が下がります。酔ったときにフラフラするのは、低血糖による場合もあります。なので、一時的な低血糖を補うという意味合いで、スポーツドリンクや果汁などがおすすめなんです。 二日酔いという症状は、「コレが原因」という特定のものがないそうです。体質によっていろいろなことが複合的に起こっているので、低血糖でフラフラしているのかもしれないし、アルコール分解が追いついてなくてしんどいのかもしれない。人によって原因が違います。なので、自分が酔ったときになりやすい症状を日ごろから気にかけて、いろいろと(対処法を)試しておくといいかもしれませんね。 ――翌朝、二日酔いのときは食欲がない…という方も多いと思います。そういうときはどういったものから口にしていくとよいのでしょうか。 【西山】まずは、水分です。前夜にしっかり水分を摂っていても、睡眠中に水分は失われているので、起きたらまずは先ほどお話したような、スポーツドリンクや果汁などを飲みましょう。ほかに、経口補水液もおすすめです。その後、何か食べられそうであれば、お粥や雑炊などを食べて胃を慣らしてから、食べられそうなものへ進んでいったほうがいいと思います。もし作る余裕があれば、 ●お茶漬け(お好みのふりかけ+梅干し+お茶)…糖質補給 ●しじみのスープ(乾燥しじみ+インスタントのワカメスープまたは味噌汁)…オルニチン、ミネラル補給 ●オートミール粥(オートミール+インスタントのコーンスープ)…糖質、ビタミンB群補給 などもおすすめです。どうしても食べられないときは、空腹のままでは二日酔いが改善しづらくなるので、スポーツドリンクだけでも飲みましょう。 ■家飲みにおすすめ!二日酔い対策レシピ 最後に、家で飲む場合に手軽に作れるおつまみ「タコのアヒージョ」のレシピも教えてもらった。「タウリンや亜鉛、タンパク質が豊富なタコをメインにしたアヒージョのレシピを紹介します。アルコールを分解する際に大量に消費されてしまうビタミンB1を多く含むブロッコリーと合わせることで、二日酔い対策にはもってこいの一品に」(西山さん)。 ■タコのアヒージョ 【材料】(4人前) タコ 80グラム、ブロッコリー 70グラム、ニンニク 4片、オリーブオイル 適量、塩 2グラム 【作り方】 1.タコはぶつ切りにする。 2.ブロッコリーは小房に分ける。 3.ニンニクは、お好みで薄切りまたは半分に切る。 4.スキレットにオリーブオイルと塩を入れ中火にかける。 5.ニンニクを4に入れ、香りが立ってきたら弱火にする。 6.5に残りの材料を入れ、2分程度加熱する。 【栄養素】(1人前) エネルギー 143キロカロリー、タンパク質 11.2グラム、脂質 9.6グラム、炭水化物 5.1グラム、食塩相当量 1.3グラム 今回の取材の中で、「二日酔いには絶対コレが効く!というものはないので、とにかく自分の酔い方や症状を日ごろから把握しておくことが大事」という西山さんの言葉が印象的だった。飲み過ぎないことが一番だが、飲み過ぎてしまったときは自分の症状を把握して、今回教えていただいた対処法を参考にいろいろと試してみてはいかがだろうか。 取材・文=矢野凪紗