写真家・若木信吾さん親子インタビュー「書店BOOKS AND PRINTSの話」
「ショップバックは、この本屋で一番良かった出来事。」-若木信吾
若木信吾さんとは、マシューの部屋から東京の渋谷にある若木さんの事務所をPCで繋いでインタビューさせて頂いた。若木さんにはクールな人という印象を持っていたが、気さくな口調でじっくりと質問に答えてくれた。 -小さい頃はお父様と良く書店に行かれたというインタビューを拝見しました。 「浜松だと谷島屋書店というのが一番大きくて、うちの近所にもあったし、旭屋という書店もあって、飽きたらこっちと、あっちにいったりこっちに行ったりしていたね。親父が本を探しに行くのに一緒について行くんだけど、入ったらそれぞれ目的のコーナーに行ってね、親父の好きな本が見つかるまでは色々別の棚を見て、またレジのところで集合するという感じでした」 -浜松で書店を始めたきっかけは何かあったのでしょうか? 「写真家として初めて写真集を出した後に、出版社とやりとりをする中で書籍を作る過程やお金を含めたビジネスについては理解出来たのと、仕事を始めていたからまとまった貯金ができて。それで本を作れないかと思ってアートディレクターの原(耕一)さんに相談したら、色々と方法を教えてくれて。それで自分でも作ってみようと思って。 ただ本を作るまでは良かったんだけど、取次のこととか何も考えてなくて。作ったあとにそれが家に全部届いちゃったりして、これは本を売りに行かなくちゃいけないと思って(笑)。だから当時リトル・モアから出した本と一緒にセットで営業に同行させてもらって、青山ブックセンターとかの本屋の美術コーナーの担当の方に会わせてもらったりしていました。それでだんだんと流通の仕組みも分かってきて、同時期に雑誌の発行を始めたこともあって、一通り全体像を掴むことが出来た。 それから、元々写真集を集めていたのも大きい理由のひとつだと思う。自分の棚と書店の棚を比べて、それぞれのセレクトの趣向を考えてみたり。 あとサンフランシスコに住んでいたことがあるんだけれど、当時の書店には独自のスタイルがあって、正直どこもボロボロの本屋なんけど、セレクトはかっこいいみたいなのが良くてね。自分も本を読んできた知識もあったから、自分出来たら楽しいだろうなって思って。 ちょうどその頃の浜松も大型のショッピングセンターが出来た頃で、街のドーナツ化が進んでいたんですよ。勝手知った土地で店を出したいという思いもあったし、良い物件もあるかなと思った。それで実家に帰った時にゆりの木通りをぶらぶら歩いて、不動産屋さんに紹介してもらって借りたっていう経緯で。でも以外と浜松って不動産家賃が高いんだよね。だからそんなにリーズナブルな買い物じゃなかったかな。ものすごく狭いスペースだったし」 全くの素人の状態から本屋を始めたエピソードを、若木さんは笑顔を交えて話してくれた。ただ自分の好奇心に従って独自の世界感を打ち出そうとしていた当時の強い意志が伝わってきた。