写真家・若木信吾さん親子インタビュー「書店BOOKS AND PRINTSの話」
―BOOKS AND PRINTSがあって良かったですか? 「それは息子には感謝していますよ。私の人生では全然違った数年間です。色んな新しい経験をしましたよ。家へ帰れば昔と変わらず同じですけど、ずいぶん精神的にも社交的にも変わりましたね。 立場が変わると考え方も変えないといけませんし、やっぱりお客さんですから丁寧にしないといけないですから。でも丁寧すぎると距離ができちゃいますから、その辺のバランスが難しいですね。親しくなるとぞんざいになりますが、そこはお相子ということで。でも商売ですから売れると楽しいですね。売れないと疲れは倍増します」 -売れて嬉しかったものはありますか? 「息子の写真集が売れると嬉しいですね。まあそれは親子ですから。あとは自分が勧めた本が売れると嬉しいですね。私にも好きな本はありますから」 -今後の活動についての期待することはありますか? 「たまに雑談的に話すことはありますけど、中村さんや新村さんといったスタッフの皆さんも、ここに来て興味を持たれて一生懸命やられて、それでもっているようなもので、ただのアルバイトじゃここまではならなかったと思いますよ。 潰れるっていうことが一番寂しいですから、できるだけ続けてもらいたいですね。今の状態になるまでの最初の頃の苦労を知っていますから」 意図したかどうかは別に、若木さん親子の間では、結果的に息子が父親に本屋での時間というプレゼントしたのだろうと思った。欣也さんがそれを楽しんでいた様子が伝わってきて、素直に羨ましいなと思った。 その日は雨が降っていたけれど、インタビューの後に欣也さんと浜松の街を一時間ほど歩いた。現在の浜松は典型的な地方都市の衰退例と言われていて、かつてあった本屋や映画館はほとんどなくなり、街の中心部には地方都市によく見られるシャッター商店街が広がる。 それでも昔と変わっていない路地に欣也さんは案内してくれた。 「この辺は変わらないですね。若い頃は目的がなくても街を出歩いていましたけど、今は街に来る意味が変わりましたよ」