写真家・若木信吾さん親子インタビュー「書店BOOKS AND PRINTSの話」
欣也さんは自分の言葉が少しでも偉ぶって聞こえることがないようにと、とても気を遣って質問に答えてくれているように感じた。 -ショップバックにイラストを描き出したきっかけは何だったのでしょうか? 「あれねえ。真っ白な紙袋というのは、私のイメージとしてはお葬式を連想させたんです。これじゃあどうも良くないなあと思って、最初はお店の名前を入れてね。そのうちちょこちょこと書くようになったんです。大それた計画があったわけじゃないんですが。 今でもこの店の領収書は手書きなんですね。時間かかるでしょう。私も慣れないんで、その間に15~16枚あったのを見てもらってね。そのうちこれは誰が書いたのかと袋のことも話題になって、これは面白いなと思ってね。 ただ自信があってやっているわけじゃなくてね。写真家・若木信吾の逆七光りで、興味を持ってくれていると思っているんですが」
白い紙袋がお葬式を連想させたというのは意外な感じがしたけれど、イラストを描き始めたきっかけがそういう理由だとは想像していなかったので少し驚いた。ところで欣也さんにとって、BOOKS AND PRINTSはどんな存在なのかについて質問してみた。 「私も写真集のことは分からないのにお店に立とうっていうのは、本屋は本を売るだけでなくて、世間話をしながら色んな情報をやりとりできる所だなと思ってね。店主は一人ですから情報なんてたかが知れてますが、お客さん同士話をする人もいますから、お客さん同士の繋がりを作ったり。そういうことで本屋は良い場所なのではないかと思います。 本を売ること自体にはあんまり力が入らないんですが、お客さんを呼び込んで話をしたり、お客さん同士うまく繋がりを作るのには興味がありました。前の店は狭かったんですが、距離がないっていうのは良いですね。 私はあるときからいらっしゃいませと言うのを止めたんです。いらっしゃいませと言うとお客さんは黙って入ってきちゃう。それでこんにちはと言うようにしたんです。そしたらお客さんもこんにちはと言ってくれるんですよね。それから今でもこの店ではこんにちはと言っていると思うんですよ。 あとはこういう店の役割っていうのは街の案内ですね。東京からも編集者の方などのお客様がいらっしゃいますしね」 最初は慎重に話をしていた欣也さんだが、BOOKS AND PRINTSの話になると熱っぽく自分の考えを披露してくれた。 「それぞれ考え方がありますから、あまり突っ込んでということはないですが、一応オーナーの父親ということで下手なことも言えないんでね(笑)。たまにツイッターでちょこちょこっと、こうしたほうが良いんじゃないかなあ?ということを書くことはありますよ」 -ツイッターですか。 「私の年代で使っている人間はほとんどいないんですけどね。140文字で自分の考えを収めるのが結構楽しくてね。次に続くじゃダメで、考えるのが楽しいんです。自分の想いを140字に収めるのはなかなか大変ですよ」