写真家・若木信吾さん親子インタビュー「書店BOOKS AND PRINTSの話」
「本を売ることよりも、お客さん同士の繋がりを作ることに興味があった。」-若木欣也
部屋でお会いした欣也さんは、チノパンとストライプのシャツにハンチングキャップという姿だった。浜松で工員をされていたそうで、がっちりした体型が印象的だった。少し挨拶と雑談を交わした後に、「そちらから質問をお願いします」と促されインタビューを始めた。 -信吾さんのインタビューで、子供の頃は一緒にお父様と本屋に行かれたというエピソードを拝見しました。 「私としてはね、そんなに一緒に行った記憶はないんですよ。ほとんど女房任せでね。息子との接点は少なかったです」 -信吾さんとの思い出はどんなものがありますか? 「海外への留学は金銭的な問題もありますし、行ったこともないので大丈夫かなという思いがありました。兄弟が何人もいれば一人くらいはと思いますが、一人っ子でしたし。でも彼が全部自分で手続きなんかもやりましたしね。女房が商売をやっていたんで一生懸命稼いで送り出したという感じです。 写真も子供の頃から撮っていて、高校の写真部でも新聞社かなんかのコンテストで賞をもらったりしていたので、好きなんだろうなとは思っていました。でも修学旅行で友人に写真を売っていたという話は、留学から帰ってきた時に初めて彼の友人から聞いたくらいで。私も家にいた記憶がほとんどないので、あまり干渉はしていないです」 -浜松でお店を始められたことはどう思いましたか? 「まあ、格好良く言うと町おこしに協力したいということと、あとは自分の夢があったのかもしれませんね。彼も相当の本好きですから」 -お店の開店当初はお店にも立たれていたそうですね。 「最初の小さい頃はね。あの程度なら私一人でも対応できますから。こっちになってからはやってないですけどね」 現在のBOOKS AND PRINTSは2013年にカギヤビルの2Fに移転した。欣也さんによると、浜松駅からカギヤビルへと続く通りはかつて多くの屋台が立ち並び、浜松の中でも特に賑わっていた場所だそうだ。 -お店に出られたきっかけは何かあったのでしょうか? 「むしろ逆でね。私自身は客商売という所にちょっと興味があったんですが、最初は私が出ることについては反対されましたよ。理由は写真集の説明ができないからということでね。お客さんとの会話ができないだろうと。勉強してからならいいけど、そうじゃないと無理だと反対されました。 当時はアルバイトの方がいて、その人の都合のつく日しかお店をやっていなくて。閉めているのはもったいないと思って、空いている時間を私がやろうかということで始めました。確かに外国の写真家のことなんて知らないから、ツイッターなんかにも書かれたことがありますよ。あの店に行ったら本のことを知らないと言われたが、面白いからまた行ってみようとかね(笑)。隠してもボロが出るんで、そのままのこと話しますから。説明はないんですよ。どんなのが良いですかね?と聞かれても、あなたが見て一箇所でも良いと思ったのが良いんですよ、という話をしていましたね。 理屈はいくらでもつけられるんですよ。自分で考えればね。でもそんなこと言って、化けの皮が剥がれてもしょうがないし。だからお客さん任せで選んでもらうという形で、それで会話としては成り立っていたところもありましたね」