103万円の壁=昔の名前は「恒久減税」 30年前も問題はやっぱり財源だった
年末の税制改正大綱作成に向けて「103万円の壁」引き上げをめぐる議論がヤマ場を迎えている。 サラリーマンが主に適用を受ける基礎控除と給与所得控除の合計、つまり所得税が発生する金額(=103万円)は約30年前の1995年に100万円から引き上げられて以来変わっていない。 所得の現状に見合っておらず、負担増だという問題意識から始まった引き上げの議論だが、国会に国民民主党が法案を提出し、石破総理が引き上げを表明するに至った。 【画像】103万円の壁=昔の名前は「恒久減税」 30年前も問題はやっぱり財源だった
30年前「103万円の壁」より消費税が焦点だった
今回ここまで議論が盛り上がるのであれば、1995年にそれまでの100万円から103万円に引き上げられた時も大きな議論があったはずだが…。どう頭をひねっても「100万円の壁」という言葉を思い出せない。 その前年の1994年に税制改正大綱(案)で議論がされているはずだ。しかし当時の税制改正大綱の議論を調べても「100万円の壁」という言葉は、やはり出てこない。 1994年の税制改正大綱の方針が実質的に固まった時の新聞記事は「消費税、97年4月から5%」が大見出しになっている。「壁」は1文字もない。 それもそのはず、この時の議論は消費税(当時3%)引き上げの率と時期が大きな焦点だったからだ。当時は村山総理で自民・社会・新党さきがけ(自社さ)の連立政権だった。
“事件”の陰で…幻に終わった“107万円の壁”
それに先立つ1994年2月に非自民8会派からなる細川政権で「国民福祉税」構想の消費税7%つまり4%アップを含む税制改革草案(細川草案)が突然浮上する“事件”があった。 実はこの細川草案では、消費税アップ4%分の財源の下で基礎控除を7万円程度引き上げる計算になっていた。給与所得控除の拡充も見込んでいた。 「国民福祉税」はあえなく消えたが、もし実現していたら、今は103万円ではなく“107万円の壁”になっていたのだ。 結局、政権の枠組みが入れ替わり、自社さによって進められた1994年の税制改革大綱の議論は消費税の引き上げを細川草案の7%より低くすることが前提になった。