103万円の壁=昔の名前は「恒久減税」 30年前も問題はやっぱり財源だった
名前は「恒久減税」 財源の消費増税と一致
その際に新聞紙上でイメージされた一つが減税と消費税(増税)という同じ高さの2つの“だるま落とし”だ。基礎控除3万円引き上げは「恒久減税」の一部として“積み木”に組み込まれ、消費税の税率2%アップによる増税積み木と一致させてまとめるということだ。 そうそう思い出した、確かに「恒久減税」という用語はよく聞いた覚えがある。「壁」というイメージ先行の言葉が登場せず、「恒久減税」の一部に入ったのは、もう一つの焦点で別の減税積み木である時限的措置「定率減税」と区別するためでもあった。 増税は細川草案の消費税4%アップ(3→7%)が自社さの議論で抑えられ、2%アップ(3→5%)になることになった。 それに見合う形で「恒久減税」である基礎控除引き上げも自社さによる税制改正大綱では3万円になって、「103万円の壁」で収束する。 大切なことは、細川草案にせよ、自社さの税制改正大綱にせよ、基礎控除引き上げは「恒久減税」の中で、常に財源をセットに対応が考えられたことだ。 自民・非自民にかかわらず、不十分だったとはいえ、高齢化社会の本格化を控えての社会保障制度の維持を意識したものだった。 30年を経て日本の高齢化は進み、財政赤字も膨大になった。現在進められている「103万円の壁」引き上げの議論でも、(178万円にした場合)住民税を含めて年間約7兆6000億円という大幅な税収減が予想されるだけに、しっかりと財源を伴って行われているかを注視する必要がある。
消費税アップの逆進性をさらに強めた基礎控除引き上げ
「103万円の壁」でまとまった1994年の税制改革大綱は、きれいに言えば「直間(直接税・間接税)比率の是正」、悪く言えば景気対策と政治的産物の「アメ(所得減税)とムチ(消費増税)」でもあった。 しかし消費税という逆進性、つまり低所得の人ほど厳しくなる税のアップに対応する一つとして、基礎控除引き上げがふさわしかったかは疑問が残るところだ。 基礎控除の引き上げは所得税が発生するか否かという意味では低所得者へインパクトはあるが、適用税率が高い高所得者ほど減税金額が大きくなる。 中堅所得者層への配慮はあったにせよ、消費税の逆進性を補う役割を果たせず、さらに逆進性を強める結果となった。 実際、この時の税制改革大綱は、ほかに税率区分の見直しなども行ったが、所得税・住民税減税と消費税増税を比べた結果、1998年から標準世帯で年収600万円以下が実質増税、600万円超が減税になるという試算を大蔵省(現・財務省)が発表している。 社会保障の財源確保とは言え、全体として金持ち優遇の税制改革だったと言われてもしかたがない。