民意と乖離するメディアの「正しさ」―女川原発再稼働報道を考える
マスメディアが喚起した「不安」
少なくとも近年、原発を巡る新聞業界の主流が民意から乖離していた実態は明らかだ。それはときに民意のみならず、昨年大きな社会問題になった福島第一原発の多核種除去設備(ALPS)処理水問題のように「客観的事実」にさえ及ぶことさえあった。 少なからぬ新聞が──特に上記「反対」を訴えた各紙を中心に、処理水を「汚染水が海洋放出される」かのような人々の誤認固着や怒りを誘う記事を出した。その一方で、不安を払拭させる正確な情報は積極的に伝えようとはしなかった。
「汚染水」喧伝が続き処理水問題が長期・深刻化する中、政府は自ら積極的な情報発信に乗り出し、民間有志は「汚染水」情報への反論を続けた。それらの結果、22年末には民意が放出容認・賛成が多数になった。 ところが、その後も様々な新聞が「人々の不安」を盾に、海洋放出反対を主張し続けてきた。立憲民主党の一部と共産党・社民党・れいわ新選組の議員らも、これら「汚染水」喧伝に積極的に加担し続けてきた。 一方で、SNS(X)における100万件以上の投稿を分析した調査からは、彼ら彼女らには強い政治的党派性があり、主要論点が当事者とは乖離していたことが明らかになっている。福島より遥かに大量のトリチウムを放出し続けている中国などの原発は何ら問題視しない傾向もあった。主な反対理由は「当事者のため」などでは全くなかった、政治的・党派的な理由であった可能性が高い。 結局、ALPS処理水放出が開始されても汚染など当然起きなかった。漁業者らが懸念していた風評被害も概ね起こらなかった。しかも、「汚染水」は中国、ロシア、北朝鮮などが仕掛けた偽情報を用いた情報戦であり、人々を煽動し惑わせるプロパガンダであった実態さえ明らかになった。 つまり、報道と一部政党・政治家らの言動には、少なくとも日本の国益に資する「正しさ」などでは無かった。莫大な時間や社会的リソースを空費させられた処理水問題の代償は消えず、今後も我々一人ひとりの国民に全て降りかかり続ける。(NHK政治マガジン「外交戦と偽情報 処理水めぐる攻防を追う」、外務省ホームページ「偽情報の拡散を含む情報操作への対応」、朝日新聞GLOBE+「韓国で暗躍する北朝鮮スパイ 押収された指令文「処理水を利用して日米韓を粉砕せよ」」)