【いま行くべき究極のレストラン】東京産の豊かな食材を活かしたローカルガストロノミー
小机家は山林業で財を成した資産家で、いまも洋館の隣に住む。小机家住宅で最近までカフェを経営していたが、松尾さんの熱情にほだされ、貸してくれたという。文化財指定は洋館の部分だけで、増築された奥の家屋は指定されていないから改装可能。なので、洋館部分は個室にしてほとんど触らず、奥に一枚板のカウンター7席と厨房を設えた。 シェフが目指すのは、《身体と地球に優しい、東京の食材と文化を大切にするフレンチ×ローカルガストロノミー》。 「もともとこの地域には食材が豊富なのは知っていたので、自分で店をやるなら地産地消の東京ローカルガストロノミー。西多摩のハブになって、この地域の豊かさを広めたいと思ったのです」
東京には東京湾も八丈島、大島もある。野菜は自分で作っているし、東京和牛や東京軍鶏、豚肉のTOKYO X、山羊も近隣で手に入り、美味しいチーズやパンを作っている仲間、シーズンになれば秋川渓谷で鮎を釣ってくる職業漁師もいるというわけだ。 「このあたりはいいジビエも獲れるのですが、いい処理施設が東京にないので、これだけは埼玉産になってしまいます」とシェフは笑うが、逆にいえば、それ以外は東京食材でまかなえるということだ。
夜のコースは毎回、「多摩 島」で始まる。多摩を象徴する料理は東京和牛のブレザオラと奥多摩のわさびを使い、島は漬けにしたアオダイと酢飯のチップを使った「島寿司」の再構築だった。
そこからは東京食材のオンパレード。畑で採れた内藤かぼちゃのローストをピューレにして五日市で採れる柚から作った柚子胡椒を添えたり、八丈島の伊勢海老は3分ほど茹でてから、アメリケーヌソースのムースを敷いて、レモングラスと生姜のオイル、あさりのジュレを添える
秋川渓谷で獲れた鮎は魚醤につけて干物にしたあと、東京軍鶏のパテをはさむ。土瓶蒸しは鴨と鹿のコンソメに四方竹をはじめとした自家製の野菜がたっぷり。