「すしざんまい」の社長は、なぜマグロの初競りで「1億円」以上のお金を払うの?「1皿数百円」では大赤字だと思うけど、そんなに宣伝効果があるものなのでしょうか?
3億円のマグロはいくらで売れた?
2019年の初競りで、3億3360万円の過去最高額がついた青森県大間産のクロマグロですが、重量は278キログラム、寿司にすると1万5000貫分に相当します。1貫あたりの価格を単純計算すると、以下のとおりとなります。 3億3360万円÷1万5000貫=約2万2000円 しかし、実際には大トロ398円、中トロ298円、赤身158円(いずれも税別)という通常価格で提供されたそうです。そこで、売り上げを考察してみます。マグロの部位の割合は個体差が大きいということですが、仮説として、大トロ10%・中トロ50%・赤身40%として計算します。 1万5000貫をこの割合に分けると、大トロ1500貫、中トロ7500貫、赤身6000貫です。売り上げを計算すると、 大トロ 398円×1500貫=59万7000円 中トロ 298円×7500貫=223万5000円 赤身 158円×6000貫=94万8000円 合計378万円となり、この金額を原価で差し引きすると、赤字の額は約3億3000万円です。しかし当時は、メディア報道により、店舗の前には100人以上の行列ができるほどのにぎわいを見せました。 この戦略により、特別感とお得感を演出し、すしざんまいのブランド価値をさらに高める結果となったのです。
初競りが注目される理由は、文化的背景にあった
そもそも初競りとは、その年最初に行われる競りのことで、豊洲市場では毎年1月5日に「マグロの初競り」が恒例行事として開催されています。この行事は、年間の漁獲のスタートを象徴し、景気付けや商売繁盛を願う特別な意味を持っています。 中でも「一番マグロ」は注目の的で、仲卸業者が自慢の5本を並べ、その中で最も高値が付いたものが「一番マグロ」として報道されます。すしざんまいは過去10年で5回、一番マグロを落札し、初競りの象徴的な存在として注目を集めてきました。 しかし、すしざんまいは、近年は高額落札が続いた影響や社会情勢を踏まえ、一番マグロを落札することを自粛する傾向が見られます。それでも、初競り自体は日本独自の文化と市場の活気を象徴する特別なイベントとして、今も多くの注目を集めています。