【はばたけラボ 子育て質問箱】娘が心配 予定をしっかり把握したい
未来世代がはばたくために何ができるかを考えるプロジェクト「はばたけラボ」。食べること、くらすこと、周りと関わること、ワクワクすること・・・。今のくらしや感覚・感性を見直していく連載シリーズ。今回は、弁当作りを通じて子どもたちを育てる「弁当の日」の提唱者・竹下和男(たけした・かずお)先生が、子どもが大学生になっても心配でたまらない親にアドバイスします。 娘が心配 予定をしっかり把握したい 【質問】 私は19歳の大学生の娘を持つ母親です。最近は物騒な事件も多いし、女の子だということもあって、何かと娘のことを心配しています。出かける際は、行き先や一緒にいる人、帰宅予定時間などきちんと教えてほしいし、早めに帰ってきてほしいと思っています。しかし、こうした予定を尋ねると、娘は「細かいことまでうるさい。監視が厳しすぎる」と怒ってしまいます。外食をする際の連絡は欠かさずにくれるものの、もう少しこまめに状況を知らせてくれると安心なのですが・・・。 ▼心配なのは愛しているからこそ 無関心では「家族の絆」が育たない 私は二人の息子を育てましたが、男の子でも、そして私が父親でも、何かと心配は尽きませんでした。もう20年以上も前のことで、今とは全く社会環境が異なりますが、当時の世間でさえ物騒なことがあふれていました。娘さんならよけいに不安が高まって当たり前です。親として、息子が取り返しのつかない失敗(事故・事件)をすることは絶対に未然に防ぎたいので、最低限の安全確認ができる予防線を張ろうとするのですが、それに対して子どもは「自分の息子が信じられんのか!」と強く言い返してきました。「お前が大丈夫でも、だまそうとしている人にだまされることがあるぞ」と言うと、「ぼくの友だちを信じるなということか!」と埒(らち)があきません。 反抗期とは「いつまでも子ども扱いするな」という子ども側からの訴えです。親は、広がったわが子の行動範囲(世間)には、未経験の危険なことが多いし、想定外の「悪のさそい」があるかもしれないと思うから余計に心配になります。子ども側からすると、今まで「人を信じなさい」と育てられてきたのに、今度は「人を疑いなさい」と親から言われていることになります。大学生にもなると、親の許可を得てからでないと自由に遊べないとなれば、友だちから「自立できていない幼子扱い」されるのです。 ところが、「荒れる中学生」と言われた時代に生徒指導に関わってきた私の教師経験からすると、「子どもを信じているから好きにさせている」と言っている親の子ほど、不純異性交際が収まらなかったり、深夜徘徊(はいかい)を繰り返したりしていました。そんな生徒から「うちの親はバカだ」とも聞かされました。 わが子が好きな食べものを、欲しがるときに欲しいだけ食べさせてきた親の子どもが、「家族の絆」そのものを全く持ち合わせていない若者になっているという現実を、岩村暢子さんが近著『ぼっちな食卓』(中央公論新社)で報告しています。それは「子どもファースト」で育てたというよりも、育児放棄に思えます。親は、「子どもに嫌われたくない」から、わが子に言いたいことも言わなかったそうです。 娘さんに嫌な顔をされながらも声掛けしているお母さんは立派です。そして「外食をする際の連絡は欠かさずにくれる」娘さんを大いにほめてあげてください。さらに、そんな娘さんに育ててきた自分に自信を持ってください。これからも、愛するがゆえに心配する親の姿をわが娘に見せてあげてください。 竹下和男(たけした・かずお)/1949年香川県出身。小学校、中学校教員、教育行政職を経て2001年度より綾南町立滝宮小学校校長として「弁当の日」を始める。定年退職後2010年度から執筆・講演活動を行っている。著書に『“弁当の日”がやってきた』(自然食通信社)、『できる!を伸ばす弁当の日』(共同通信社・編著)などがある。 #はばたけラボは、日々のくらしを通じて未来世代のはばたきを応援するプロジェクトです。誰もが幸せな100年未来をともに創りあげるために、食をはじめとした「くらし」を見つめ直す機会や、くらしの中に夢中になれる楽しさ、ワクワク感を実感できる体験を提供します。そのために、パートナー企業であるキッコーマン、クリナップ、クレハ、信州ハム、住友生命保険、全国農業協同組合連合会、日清オイリオグループ、雪印メグミルク、アートネイチャー、ヤンマーホールディングス、ハイセンスジャパンとともにさまざまな活動を行っています。