芥川賞は九段理江さんの「東京都同情塔」、直木賞は河﨑秋子さんの「ともぐい」・万城目学さんの「八月の御所グラウンド」に決定
日本文学振興会は17日、第170回芥川賞・直木賞の受賞作を発表した。芥川賞は九段理江さん(33)の「東京都同情塔」、直木賞は河﨑秋子さん(44)の「ともぐい」と万城目学さん(47)の「八月の御所グラウンド」に決まった。
芥川賞の九段さんは、2回目のノミネートで受賞した。受賞作発表後の記者会見で、九段さんは「小説は自分が好きで勝手に書き始めたんですけれども、書き続けるっていうことは1人ではどうしても難しいものですから、書き続ける力をいつも下さる出版社の方ですとか家族や友人、楽しみに読んでくださる方々に本当にありがとうございます、とお伝えしたい」と緊張した面持ちで語った。 受賞作の「東京都同情塔」については、「言葉で何かを解決しようとか、言葉で対話をすることを諦めたくない方のために書いた作品。言葉によって考え続けることをやめたくない、という気持ちがこの小説を書かせてくれました」と力強く語った。
直木賞の河﨑さんも、九段さんと同じく2回目のノミネートでの受賞。会見では、「ちょうど1時間半ぐらい前に、受賞のお知らせをいただいたときから喜びの渦に巻き込まれて、まだちょっと地に足がついていないような状態でおります。あこがれみたいなものがありましたので、今回賞をいただくことになり本当にうれしく思っております」と落ち着いた表情で喜びを口にした。 北海道生まれで、現在も北海道在住。「運命的な何かがあれば別ですが、今のところ北海道を出たくないなと思っております。まだまだ北海道で調べたいこと、掘り出したい物語がある」と述べ、今後も北海道で活動を続ける考えを示した。
万城目さんは、ノミネート6回目での直木賞受賞。「もうずっと取ることはないな、と思ってたんで、全然緊張せず他人ごとのように暮らしてまして。今日も『今日は(発表)あるんか』みたいな感じで過ごしてましたんで、連絡が来て『受賞です』みたいなことを言われたときは本当にびっくりしました」と驚きを語った。 受賞作は京都が舞台の青春小説。「書いた後に『このやり方で書くとこういう手応えの良い作品が書ける』ってそのとき思ったんです。けれども次の日に全部忘れちゃって、書き留めたらよかったなと思ったんですけど、何かしらね、いい方向にいったんですよ」と、執筆後に感じた手応えを振り返った。 (取材・文:具志堅浩二)