「幸せになってほしい」は“有害な言葉”である…人生が「なぜか満たされない」ものになる本当の訳
人間関係の些細なすれ違い、職場での小さなトラブル、子供の頃や学生時代の苦い思い出……「えっ、そんなことで?」と思うような出来事が、実はあなたの人生に重大な影響を与えているかもしれません。イギリスの心理学者メグ・アロールの著書『なぜか「なんとなく生きづらい」の正体』(野中香方子訳)は、近年、心理学や臨床心理の領域で注目され始めた“小さな心の傷”=「スモール・トラウマ」とその対処法に光を当て、世界40カ国以上で刊行される超話題書となっています。同書より、競争が激化する現代社会ならではの「スモール・トラウマ」を引き起こす原因と対処法を、一部抜粋・編集のうえご紹介します。
■ただ幸せになりたいだけ、という問題 「ただ幸せになってほしい」というのはありふれた言葉で、無害なだけでなく、温かく、思いやりがあり、相手の支えになるように思えます。けれどもこの言葉は、現代において最も有害な言葉の1つかもしれません。そう聞いて驚く人もいるでしょうが、誰か、あるいは自分自身が幸せになることを望むのは、根本的に間違っています。それは子どもに向かって、「この上なく美しいチョウを捕まえてきて、瓶に入れて、いつまでも飼いましょう」と言うようなものなのです。
チョウはもちろん実在し(ここで言っているのはごく普通のチョウのことで、希少種のことではありません)、 捕まえて瓶に入れておくことはできますが、そう長くは生きられないでしょう。必然的にあなたはチョウを失います。それなのに、あなたが愛する人は、この世で何より素晴らしいことはきれいなチョウを飼うことだと言い続けるのです。 永遠の幸せを求めることはスモール・トラウマになり得ます。なぜなら、そうすると人は生涯、自分は何かが足りないと思い続けることになるからです。両親があなたに望むものを、あなたが決して手に入れられなかったら、あなたは完全な敗北者なのでしょうか?