水だけで1か月間……榎木孝明さんの「不食」 医学的には問題ないの?
俳優の榎木孝明さんが30日間の「不食」を行い、話題になっています。スポーツ報知の記事によると、榎木さんは5月20日からほとんど水しか摂取していないにもかかわらず“元気で顔色も肌つやもいい”とのこと。しかし、長い期間食事をとらなかったり、ごく少ししかとらなかったりすることは、果たして健康に良いと言えるのでしょうか? 調べてみました。
「食べない」ことの医学的根拠は?
記事によると、榎木さんは不食を実践したことで“集中力が増し、本を読むスピードが格段に速くなった。睡眠も深くなり、4時間眠ればすっきり。腰痛も消えた。”など効果を実感しているとのことです。ネットで検索すると「プチ断食」や「絶食療法」など、一定期間食べなかったり、食べる量を極端に制限したりする健康法は多く提唱され、実践する人も少なくないことがわかります。では医学的には、どの程度根拠があるのでしょうか? 2013年にドイツのシャリテ・ベルリン医科大学の研究者が、専門家の管理の下で1~3週間にわたって1日200~500kcal程度の食べ物しかとらずに過ごした場合の効果をまとめた論文を発表しています。(日本人の場合、一般的な成人の摂取エネルギーは男性で2000~3000kcal程度) 論文によると、前述のような食事制限を行うことで「関節リウマチ」「慢性痛症候群」「高血圧」「メタボリックシンドローム」などの病気について良い効果が認められたとしています。その理由として、食物を減らすことによってホルモンのバランスが変化したり、老化の原因となる活性酸素が減ったりすることがあるのではないか、と考察しています。 では、いわゆる断食療法は健康に良い効果があると断言して良いのでしょうか? 論文を発表した研究者は「断食療法は慢性疾患の予防や治療に利用できる可能性はあるが、さらなる研究によって検証する必要がある」としています。もっと大規模にその効果を調べる研究が行われるまでは、本当に効果があるかどうかについてはなんとも言えない、というのが正直なところのようです。 一方で進化的に人間に近いアカゲザルに対して行われた研究では、食事から摂取するカロリーを通常の7割程度にすることによって、寿命が延びる可能性が示されています。まだ研究の途上ですが、少なくともいま標準とされている食事量より少なめの食事を続けることによって、健康に良い効果があるかもしれない、ということは言えるかもしれません。