水だけで1か月間……榎木孝明さんの「不食」 医学的には問題ないの?
健康への害は生じないの?
食べないことによって、健康に害が生じることはないのでしょうか? 一般的に健康な人であれば、水を飲んでさえいれば1か月程度絶食したとしても餓死することはないと言われています。 人類の進化の歴史の中で、現代のように常に安定して食物を得られる状況はむしろ例外的な時期であり、私たちの体には、1か月程度食べ物を手に入れられなかったとしても耐えられるような仕組みが作られているからです。脂肪や筋肉などの形でエネルギーが貯蓄されており、食べ物が少なくなれば、それを分解することで生命活動を維持することが出来ます。 しかし、完全に安心して良いわけではありません。例えばビタミンなど、私たちが生きていく上で必須にも関わらず、体の中で作り出すことが出来ない栄養素はたくさん存在します。また食べ物をとらない時期が続くと、私たちの体は脂肪を分解してエネルギー源としますが、この際にできる「ケトン体」という物質が増えるとまれに「ケトアシドーシス」という状態になり、失神など深刻な事態を引き起こす危険があります。 榎木さんは専門家による厳密なチェック体制のもとで「不食」を行ったとのことですが、こうした慎重すぎるほど慎重な姿勢こそが求められるのかもしれません。
「断食療法」本当の効果は?
冒頭に紹介したドイツの論文に、興味深い記述を見つけました。 「断食の大きな効果として、生活習慣の改善のきっかけとなることが挙げられる。おそらく断食を行ったことが後押しとなり、その後も、健康的な食生活を続けようという意識が芽生えるのだ」 断食を行った人では、その後も野菜中心の食生活になるなど、一般的に健康的とされる食生活が維持されるケースが多いことがわかってきました。つまり一時的に食べる量を減らす生活をすることは、食べ物の貴重さを改めて意識することにつながり、過食や偏った食生活を見直すきっかけになる可能性があるということです。それこそが、もっとも大切な効果だと言えるのかもしれません。