7月中、毎日がお祭り 山鉾巡行だけではない京都・祇園祭の楽しみ方
京都の三大祭り、というよりも日本の三大祭りと言った方がいいかもしれないのが「祇園祭」です。祇園祭は7月17日におこなわれる「山鉾巡行」(2014年から後祭が復活し、24日にも行われるようになりました)がクライマックスとされ、その近辺に日本全国から多くの観光客が訪れます。 ところが祇園祭は決して山鉾巡行のときだけではありません。7月1日から31日まで1カ月間にわたるお祭りなのです。今回は山鉾巡行以外の祇園祭の楽しみも知っていただきたいと思います。
そもそも祇園祭とは何の祭り?
そもそも祇園祭というのは一体何の祭りなのでしょうか? 実をいうと祇園祭には二つの意味があります。一つは八坂神社の祭礼としてのお祭り、そしてもう一つは山鉾町がおこなうお祭りです。 祇園祭が始まったのは平安時代中期の869年。当時都を中心に全国的に疫病が流行したため、それを鎮めるために当時の国の数66にちなんで同じ数の鉾を立て、疫病退散の神事を行ったのが始まりです。疫病の原因が牛頭親王の祟りであると言われたことから牛頭親王を祀る八坂神社の祭礼としてスタートしたというわけです。当時の鉾は今のような車輪のついた立派なものではなく、当初は手で捧げ持つ程度の大きさだったようです。 一方、室町時代に入って商工業者、いわゆる町衆が経済的に力を付けてきたことに伴い、彼ら町衆の手によって贅を凝らした様々な風情の山や鉾をこしらえ、巡行させるようになりました。これが山鉾町としての祭りといわれるゆえんです。途中、応仁の乱などもあって一時途絶えたり、明治以降は第2次大戦時に中止になったりしたことはあるものの、およそ1000年にわたって続いてきているお祭りです。歴史的な古さからいえば同じ京都三大祭りのひとつである「葵祭」には及びませんが、知名度や人気という点ではやはり祇園祭がナンバーワンでしょう。
山鉾巡行以外の見どころは?
ところがこの祇園祭、前述のように多くの人は山鉾巡行しか注目していませんし、地元以外のメディアもほぼこの行事だけが報道されることが多いように思います。ところが7月1日の吉符入り、2日のくじ取り式から始まって31日の夏越祓(なごしのはらい)という神事に至るまで様々な行事が行われます。そんな中で山鉾巡行の前日は宵山と言って、こちらは数十万人の観光客が訪れますから山鉾巡行と並んで祇園祭のハイライトといえるかもしれません。 また、この宵山は前日だけではなくその前(宵々山)とかさらにその前の宵々々山あたりから鉾を立てて夕方になると灯りをともします。多くの人が浴衣を着て見物に来るので大変な賑わいになるのです。中にはこうした鉾に上ることができるものもありますのでそれも楽しみの一つです。さらにこの期間、古くからある町家では家の表の格子を外し、その家に伝わる美術工芸品や屏風などを展示していますので、それらを見て楽しむこともできます。 とは言え、祇園祭の主役はなんと言っても山鉾です。前掛けや胴掛け、後掛けといった装飾品の見事さは目を見張るばかりです。京都の伝統あるお祭りですからそういった美術装飾品は日本の伝統的なものばかりと思いがちですが、実はヨーロッパから輸入されたタペストリーなども飾られています。16世紀のベルギーで織られたとされている古代ギリシャの詩人ホメロスの叙事詩「イーリアス」を題材とした織物などもあります。おそらくシルクロードを通って遠く日本にもたらされたものなのでしょう。これらの装飾を見ていると室町期の商人たちの財力が大きく、豊かであったかということがわかります。