田原総一朗インタビュー「僕にとって『朝まで生テレビ!』は最大の趣味なんだよ」
1987年4月にテレビ朝日でスタートした深夜の討論番組「朝まで生テレビ!」は、放送開始から38年を迎えた。内閣や安全保障、国際情勢、宗教など、幅広いテーマについて、数多くの識者と共に熱い激論を交わしてきた同番組が、11月からBS朝日の夜7時に引っ越し決定! 放送当時から司会を務める90歳の田原総一朗に、番組への思いを聞いた。 「『朝まで生テレビ!』(以下・朝生!)が始まった当時は、深夜番組っていうのはほとんど再放送だったんですね。当時、フジテレビが『オールナイトフジ』という若い女性が登場する番組をやっていて。これが評判だったので、テレビ朝日も深夜に何か番組を作ろうという流れになったんです。でも、深夜番組って大きな難問が三つあるんですよ。一つは、制作費が安いから有名タレントを出せない。二つ目は、深夜に中途半端に終わると出演者とスタッフをハイヤーで送らないといけなくて金がかかる。だから、終電より前にテレビ局に来て、始発で帰ってもらう。つまり、長時間番組にしないといけない。三つ目は、深夜放送をするならば、視聴者に向けて相当刺激の強い番組にしないといけない…こういうことから始まったんです。当時のテレビ朝日の編成局長からは『他局が絶対に作れないような刺激の強い番組にしないといけない』と言われました。そこで刺激の強い内容を考えて、対立している両者に出てもらおうということにしました。例えば『原発問題』では、推進派の中枢にいる人と、反対派の中枢にいる人を一堂に集めて本気の討論をしていただき、その討論を少し若い世代の有識者に判断してもらいました。他にも『防衛費』とか『地球環境問題』、いろんな問題があるから、番組は作りやすかったですね」
正義か悪か、はっきりしていない方がいいと思っている
「よその国の悪口は言いませんが、中国やロシアは割と正義と悪がはっきりしているでしょう。共産主義が正義で、そうじゃなければ悪。でも僕は、デモクラシーの世界は、正義か悪か、はっきりしていない方がいいと思っています。例えば、自由民主党(※以下・自民党)もあれば、日本共産党(※以下・共産党)、立憲民主党もある。いろんな党がある方が面白いでしょう。『朝生!』は、いろんな価値観のある人に出てもらって論争をする。そういう番組を作っています。そのために批判も随分受けますよ。だけど、僕はプロデューサーやスタッフには『批判や炎上は大いに歓迎。だけど無視されるのは良くない』と言っています。 ――生放送の良さを教えてください。 「一番良いのは、例えば活字の場合は印刷がある。印刷をするということは、その間に上からいろんなクレームが来るんですよ。『ここを直せ!』とか。生放送がいいのは、クレームが来る前に放送しちゃうんで。後からクレームが届くのがいいですよね(笑)。これまでに反響が多かったのは『原発問題』かな。番組で推進派と反対派を出して大討論をさせたんだけど、普通はね、推進派と反対派は会いません。会ったらけんかになるし、下手したら殺し合いになるからね。そこを会わせる。その状況を何人かの有識者に見ていただいて、大激論をさせました」 ――討論のテーマを決めるのは誰ですか? 「それはね、僕とスタッフが話し合って決めています。でも、最終的な決定権は鈴木裕美子プロデューサーですね(笑)」 ――37年間続けられてきた秘訣(ひけつ)を教えてください。 「『朝生!』はね、仕事じゃないんですよ。僕の最大の趣味です。趣味が仕事になっているから、楽しくてしょうがないの。楽しいことをやっているから、体調も悪くならないし、ストレスも全くありません! 例えば、趣味でゴルフやマージャンをやる人は、ゴルフで『疲れた~』とか言わないでしょ。僕も全く同じ。僕はね、放送が好きだから、ゴルフもマージャンもやりません。暇がないんです。ゴルフやマージャンより、はるかに放送をやっている方が面白いからね」