元「プラス・マイナス」岩橋良昌 月収200万円と世田谷の豪邸を捨て「5万円アパート暮らし」の幸せ
インタビュー当日、岩橋良昌(46)は朝から千葉県内でゴルフをしていたという。一緒に回ったのは明石家さんま(69)、「ネプチューン」の堀内健(55)、「くりぃむしちゅー」の有田哲平(53)という豪華メンバー。「明日は朝から大阪で仕事なんで、このまま新幹線で帰らなあかんのです。今回は娘たちには会えないですね」とFRIDAYに言った後、岩橋は「でも、会いすぎると寂しくなるんで」と続けた。 【画像】元「プラス・マイナス」岩橋良昌 元吉本芸人の「今」 「さんま師匠が″岩橋を見守る会″的な感じで毎月、ゴルフ会を開催してくださるんです。コアメンバーはホリケンさんと岩井ジョニ男さん(50)、そして僕なんですけど、ジョニ男さんが最近来られなくて、今回は有田さんが来てくださいました。もともと月一回くらいのペースでゴルフしていたんですけど、たまたま僕が″暴走″した月だけ、やってなかったんですよ。それを師匠は『あのとき、ゴルフしとったら、こんなことになってなかったのにな……』と気にしてくださっているみたいで」 昨年、「上方漫才大賞」に輝いた「プラス・マイナス」。飛躍の年になるはずだった’24年は、まさかのコンビ解散の年となった。SNS等での言動をめぐり、岩橋が2月22日付で吉本興業から契約を解除されたのである。 「ラウンド後、有田さんがいろんなキャラを僕に振って、それを僕が汗だくで演じて、何がオモロいかを探るっていう時間がありました。″大谷翔平とかマツコ・デラックスとか、あらゆる芸能人、有名人の二世をやってみよう″という荒行やったんですけど、なかなかスベりましたね(笑)。″芸人の世界ってこういう感じやったな″″大変やな″と思い出した。 師匠も有田さんも、復帰の道を考えてくださっているんだと思います。実際、僕を地上波の番組に出すよう、何度も提案してくださったみたいです。ただ、スタッフさんが『わかりました!』と言ってくれても、いつの間にかその話は″なかったこと″になっているそうです。忖度(そんたく)とかがあるんでしょうね」 契約解除となって、くもの子を散らすように人が離れていった。「吉本の芸人で、本気で僕に絡んでくれたんは師匠と『テンダラー』の浜本広晃(ひろあき)さん(50)だけですね」と岩橋は苦笑いした。 ◆築3年、ほとんど住んでない 「テンダラーはNGK(なんばグランド花月)の看板漫才師で、僕と絡むのはリスキーやのに……浜本さんは僕をカラオケやご飯に誘ってくださって『最近どうや?』って気にかけてくれました。一緒に旅行にも行きますし、その様子をガンガン、SNSにもあげる。師匠と浜本さんには、しがらみを取っ払ってお付き合いしていただいています」 吉本を離れた後、岩橋は個人で事務所を設立。マネジメントと、TikTokやYouTubeの撮影や編集をしてくれるスタッフを雇って活動している。 「TikTokでひたすら僕がご飯を食べている姿を上げるのと、週に一本、YouTubeで動画をアップするようにしています。あとは企業の周年パーティーでMCをしたり、パチンコ店に営業に行ったり、アパレルのPRをしたり。なんとか生活できていますけど、経費の支出と税金が痛いですね」 そう嘆く岩橋がアテにしているのが、東京・世田谷に建てた豪邸の売却益だ。 「3階建てで、10畳ある屋上でバーベキューしたり、ハンモックを吊るしてのんびりしたりできます。こだわりのポイントは書斎とランドリールーム。2畳ずつぐらいのスペースがあって、お父さんの秘密基地みたいな面白い使い方ができます。最寄り駅は千歳烏山。特急が止まります。内見は結構入っているんですけど、まだ売れてないんですよ。築3年で、家族で住んだのは1年弱。そのあと僕が一人で半年暮らしただけ。ほとんど住んでないんで綺麗ですよ。もう空っぽの状態なんで即入居可です。フライデーの読者さん、いかがですか?」 世田谷の豪邸を手放した岩橋が暮らしているのは、実家がある大阪府内の8畳1K、5万円のアパートなのだという。 ギャラの高さに惹かれて受けた仕事では「人生最悪のスベり」も経験した。 「夜のお店の一日店長をやって、シャンパン入れてくれたお客さんの席に行って盛り上げる、みたいな仕事もしました。僕は人見知りするので、いろんなお客さんがいるだけで緊張するし、″芸人なんやから飲め飲め″って絡んでくる人は苦手。キツいんですけど、ギャラがいいので、娘たちの顔を思い出し、お酒をグイッと流し込んでなんとか頑張りました。 ただ……生演奏でカラオケができるバーみたいな店に営業に行ったとき、『なんかネタやって』って流れになって、下ネタをやったんです。目の前にガラの悪い男とその彼女みたいなカップルが座ってて、ネタが終わったとたん、その男が『なんやお前、全然おもんないな!』と。『すいません』言うて席に戻ったら、今度は女がツカツカって来て、頭からシャンパンかけられて、『面白くないんだよ、お前!』と。ゲームの『龍が如く』みたいな世界やな……と思ってたら、『ネタやって』と僕をさんざん煽(あお)った知人たちが皆、俯(うつむ)いとったんです。誰もシャンパンで濡れた僕を助けに来てくれんかった」 仕事を振ってもらえることはありがたい。だが、わずか10分のステージで何万円も稼げた吉本時代が輝いて見えた。 それでも、前の生活に「未練はない」と岩橋は言うのだった。 「仕事は会社やマネージャーが取ってきてくれて、毎日のようにメールで送られてくるスケジュールさえこなしていれば、結構なおカネがもらえる。正直、恵まれていたと思いますし、吉本を飛び出したことを後悔した時期もありました。けど今年、初めてゴールデンウィークに旅行して、″世間は大型連休をこんなに楽しんでるんや″とわかった。 休日を仲間と共有できたのがすごく嬉しかった。先日、宮古島でスキューバダイビングをしたんですけど、僕、泣いてもうたんです。感動して。″こんな世界があることを知らずに人生が終わるとこやった″って思った。今の生活、不安はあるけど自由もある。ありがたいことやなって」 「プラス・マイナス」の実力を知る芸人たちからは解散を惜しむ声があがった。 なかでも大きく取り上げられたのは、「トミーズ」雅(64)の「今後20年で4億~5億円を捨てたようなもん」との言葉だ。 「上方漫才大賞って一番、ギャラの上がり幅が大きいんです。月収が200万円からさらに上がるタイミングで辞めたのは、相方には本当に申し訳なかったんですけど……その未来に憧れはなかったんです。 NGKでは、鉄板のネタをやっていれば、お客さんは入れ替わるので、 ずっとウケるんです。10分働いて、控え室でゆっくりして、また10分働く。1週間出番があって、1週間休んでまた1週間働く。技を磨き上げていく、伝統芸能の世界です。それはそれで最高の場所やと思いますけど、命の残り時間が限られる中、僕はもっと刺激的な人生を生きたかった。世間的には持病の強迫性障害が原因で暴走して、勢いで辞めたみたいになっていますけど、もちろんそれもあるんですけど……漫才やってて、この数年間、実はずっと面白くなかった」 自宅で好きな時に生配信をして、やめたいときにやめる。世界中の人々と繋がり、忖度もしがらみもなく、面白いと思ってもらえれば投げ銭でおカネが入る。数年前から岩橋は「新しいライブの形にすごく興味があった」と言う。 ◆強迫性障害はガチャ 「今、英語を勉強しています。僕がご飯を食べる動画がTikTokで結構、外国の方に観られていて。英語で配信したり、アメリカとか海外にも行ってみたい。吉本時代は休みがほとんどなく、一日12ステージなんて日もあって、とてもそんな時間的余裕はなかったですから。 強迫性障害のことも、″笑いにくくなる″ちゅうことで、長らく吉本には公表を反対されていたんですけど、この病気であることを隠して生きている人、引きこもってる人がたくさんいるんです。変な人だと思われるのが怖いから。でもね、誰も好きで強迫性障害になったわけじゃない。完全にガチャなんですよ。治らんかもしれんけど、共存はできる。″なんとかなるよ。一人じゃないよ。一緒にやっていこう″と伝えたい。彼らが生きやすくなる活動は絶対したい」 時間的余裕ができて、仕事も選べるようになった。少し無理して夜の営業を入れていたのは「娘たちが成人するまで必ず送金を続ける」と誓ったからだ。 「元妻とはいい関係が築けています。月一回は娘たちと会わせてくれますし、テレビ電話もしてくれる。健康も気遣ってくれますし、『(暴言を)リポストするだけで同罪になるよ』なんてアドバイスもくれます(笑)。長女は僕がまたSNSでいらんこと言ってないか、チェックしてくれているそうです。大きくなったなぁって……元妻は鳥取の出身なんですけど、縁もゆかりもない東京でしっかり子育てをしてくれてる。感謝しかないです」 大阪を中心に仲間の輪が広がり、「来年は夜の営業もしなくて済みそう」と笑みを浮かべた岩橋。契約解除からの10ヵ月間は自身にとって何だったかと問うと、しばらく考えた後、こう答えた。 「むきたまご」――。 「硬い殻を破って、すごく敏感で繊細な部分がむき出しになった。怖いし、リスキーだから殻に閉じこもる人が多いんですけど、ポンとスタートラインに立った。さあこれから、俺の人生はどうなっていくのか? 今ね、大阪のアパートで、一番安い3万円くらいの洗濯機で洗った衣類を干しているときが楽しいんです。まさか岩橋がここで洗濯物を干してるとは誰も思うまい、と。さんま師匠とゴルフした後に一人で洗濯という落差がたまらんのです。人里離れた場所でひっそり剣を研いでいる感じ。これからどうする? 何でもできるぞ? って。気持ち悪い生き方してんなって思いますけど、面白い。ワクワクが止まらないですね」 苦しみもがいて殻を破ったことで、求めていた「面白い」を岩橋は手に入れた。 『FRIDAY』2024年12月13・20日合併号より
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