お年寄りが好きな「地元のお菓子」がいきなりトレンド1位に…愛知名物「しるこサンド」が新たなファンを生んだSNS戦略
SNSのユーザーが求めているのは企画モノではない
広報立ち上げメンバーは2人。若手の実働部隊として白羽の矢が立ったのが可兒さんだった。驚くべきことに、その時に入社したばかり。しかも前職は販売員と、まったくのSNS未経験だった。 「写真の撮影から文字入れ、文章構成作り、返信も、基本的には全部自分たちでやります。私はそれまでPCをろくに触ったこともない状態だったので、画像処理などはかなり難しかったです。何よりも、個人のアカウントと企業の公式アカウントとでは責任の大きさがまるで違います」 SNS運用および広報のスキルを習得するため、日々セミナーや勉強会へ行っては、少しずつ経験値を積み上げていったという。 Xのアカウント自体は、広報部が立ち上がる前からあったが、フォロワー数は600程度。2015年に新発売した「生しるこサンド」の催事情報を伝えるだけのbotのような存在だった。それでは意味がないということで、80周年を機にテコ入れしたわけである。 「当時、SNSの企業公式アカウントが全盛期で、中の方たちがユーザーと活発に交流しているのを見て羨ましく思っていました。当社としても広報部がせっかく立ち上がったのであれば、情報発信は当然のこと、お客さまの意見を聞くことも強化したいと考えました。今までもお客さま相談室はありましたが、顧客の声をもっと身近なところで聞きたいという要望もあって、それをSNSでカバーしようとなりました」 つまり、SNSを活用してプッシュ型とプル型双方の活動を行うこととなったのである。広報部が立ち上がり、SNSの本格運用が始まってからは、基本的に毎日投稿することを目標に掲げた。「大変でしたね」と可兒さんは苦笑いする。 「最初は企画ものみたいなことを考えたりするのですが、ネタはすぐに尽きてしまいます。でも、SNSを運用していく中でお客さまが求めているのはそういった企画ではなくて、ちょっとした小話だったり、中の人がどんな感じで働いているのかだったりと、等身大の部分を知りたいのだというのが徐々にわかってきました」 そこで、ある時期を境に「今日は暑くなりそうなので、水分とお菓子をちゃんと食べて、気をつけてね」などといった投稿をするように変えたら、コメントが多数つくなど盛り上がった。 「お客さまが求めているのは特別なことではない。そして、続けていくことや変わらないことが大切なのだと、今はそう思っていますね」と可兒さんは強調する。 1年が経つ頃にはSNS運用のコツを掴んだ可兒さんは、積極的にユーザーに絡んでいくことになる。 「エゴサーチは必ずしますし、例えば、ユーザーがしるこサンドについて投稿したら、積極的にコメントを付けています。そうするとユーザーも『公式が反応してくれた』と喜んでくれます。今ではうちの会社のことを何か言えば反応してくれるという認知が広まり、投稿数も日々増えていますね。だいぶ対応が追いつかなくなってきました(笑)」と可兒さんは嬉しい悲鳴を上げる。