なぜ清水と湘南がJ1に生き残り徳島がJ2降格となったのか…「重要な試合に慣れていない選手ばかりだった」
清水は3チームのなかで唯一、自力で残留を決められる状況にあった。 先月4日に急きょ就任した平岡宏章監督のもと、前節までに今シーズン初の連勝をマーク。引き分け以上で残留が決まる一戦で前半35分にセレッソに先制点を、しかもオウンゴールという不運な形で献上した。それでもアカデミー出身のMF西澤健太の言葉を聞けば、チーム内に力強く脈打つ好循環がひしひしと伝わってくる。 「負ける気がしなかったし、誰一人として動揺していなかった」 果たして、前半アディショナルタイムに西澤の正確無比な直接フリーキックを、ゴール正面に詰めたDF鈴木義宜が押し込んで同点で折り返す。後半6分には右サイドでこぼれ球を拾った西澤が、ペナルティーエリア外から利き足とは逆の左足を一閃。相手キーパーが一歩も動けない一撃を、ゴール左隅へ鮮やかに突き刺して逆転した。 「あのゴールには、自分の実力だけでないパワーがこもっていた」 大一番でヒーローになったプロ3年目の25歳は、歓喜の表情を浮かべながらベンチ前へ駆け寄り、ユース時代の恩師でもある平岡監督と熱い抱擁を交わした。 「こういう状況でも監督を引き受け、しかも負けずにチームを残留に導いたのは本当にすごいこと。その手助けができたことを選手として誇りに思っている」 西澤からこんな言葉を送られた平岡監督は、徳島がリードされている途中経過を把握しながら、全幅の信頼を置く選手たちには伝えなかった。 昨シーズンに続いてコーチから昇格し、終盤戦で清水を蘇生させた。チームへ犠牲心と一体感を求め、就任後の4試合で3勝1分けの星を残し、最後はホームでの逆転勝利で残留を決めても、口を突いたのは今シーズンから指揮を執ったスペイン出身のミゲル・アンヘル・ロティーナ前監督が先月4日に解任されたことへの反省の弁だった。 「コーチとしてロティーナさんを支えられなかったことが、私のなかで一番悔いが残っている。最後の4試合は残留をかけて割り切るところは割り切る、行くところは行くサッカーへ、犠牲心と一体感を持って取り組む形に切り替えた。エスパルスはJ1にいなければいけないクラブなので、その意味ではよかったと思っている」