「他人を変えようなんて傲慢」義両親と暮らすナイツ・塙が考える“他者との付き合い方”
「他人はコントロールできない」大事にしたいのは相手へのリスペクト
――塙さんは、漫才協会の会長として歳が離れた師匠たちとも多く関わっていますが、歳が離れた人との関わり方で意識していることはありますか。 塙宣之: 「この人の話を1時間聞いて何の役に立つんだ」とストレスに感じることがあるじゃないですか。以前は僕もそうでした。けれど、その時間って、人生に深みをもたらしてくれると思っているんですよね。時間効率を考えて生きる方が成長は速いのかもしれないけど、人生の経験値が積めないというか。「自分はいま忙しいのに、なんでこの人のために時間を費やしているんだろう」と思っちゃうと、付き合う人も選ぶようになる。だけど、その時間を「無駄な時間だけど無駄じゃない」という感覚を持てれば、自分の芸の幅や味になると思うんですよね。 ――歳が離れた人に限らず、自分の考え方と違う人と関わるときに心がけていることはありますか。 塙宣之: 他人は、自分の思った通りにならないのが当たり前だと思っていますね。一言で言うと、その人それぞれのスタンスは変わらないし、変えようがないということです。 昔、パワハラ系の先輩がいて、すごくきつい時期がありました。そのことを違う先輩に相談したら「あいつはあいつのスタンスがあって、それは変わらないし、変えられないと思うよ」と言われたんです。それからパワハラ系の先輩に対して「この人はこういう人なんだ」と思うようになったら、付き合うのがそんなに辛くなくなったんですよね。「何でこの人はこんな態度を取るの?」とこっち側が思ってしまうと、大変なのかもしれません。 漫才協会に所属している芸人たちも、みんなわがままなんですよ。漫才協会って事務所ではなく、各プロダクションに所属している芸人の集まりだから「自分が売れるためにどうしたらいいか」しか考えてない。自分のことしか考えてないのは当たり前で、それをまとめようとするのがまず無理な話なんです。だから「絶対にまとまらない」と思っちゃった方が楽です。いろいろな国の集まりみたいなもんで、それを一つの国にしようとするから、ストレスがたまっちゃうわけで。「いろいろなわがままな人がいて協会が成り立っていて、これが最高のバランスだ」と思えば、あまりストレスがたまらない。これを無理に変えようとするから、均衡が崩れてしまうんです。 結局、他人をコントロールすることはできないですし、それは傲慢な考えです。他人をどうにかしようと働きかけることより、それぞれをリスペクトすることが、結局一番大事だと思いますね。 ----- 塙宣之(はなわのぶゆき) 1978年、千葉県生まれ。漫才師。2000年、大学の後輩だった土屋伸之と漫才コンビのナイツを結成。浅草を拠点に、ヤホー漫才など、独自の漫才芸を磨き、2008年のM-1グランプリで3位に入賞して注目を集める。TBSラジオでは2015年から「土曜ワイドラジオTOKYO ナイツのちゃきちゃき大放送」を担当。2023年6月には漫才協会の会長に就任するなど、各方面で活躍中。 文・中森りほ