「箱根山戦争」舞台の芦ノ湖、新遊覧船は五輪開催地の公園を意識 JR西日本「ウエストエクスプレス銀河」デザイナーが明かす裏話 連載『鉄道なにコレ!?』【番外編】
首都圏大手私鉄の小田急電鉄、西武鉄道の両グループがリゾート開発で約20年間火花を散らした「箱根山戦争」の舞台となった芦ノ湖(神奈川県箱根町)で、西武側の事業を買収した富士急行が遊覧船「箱根遊船 SORAKAZE(そらかぜ)」を導入した。デザイナーを務めたのは、JR西日本の長距離列車「ウエストエクスプレス銀河」を手がけた川西康之氏だ。川西氏は小田急グループの海賊船の形をした遊覧船とは大きく異なる〝湖上の公園〟のような船上空間を実現するため、オリンピック(五輪)開催地の有名公園を意識したことを明らかにした。(共同通信=大塚圭一郎) 【写真】「オーバーツーリズム」克服できる?ぎゅうぎゅう詰めのバス、あふれるゴミ、各地の取り組みは? 観光立国目指す日本「外国人に来てもらわなあかん」
▽訪日旅行客でV字回復 快晴の日には富士山を望むことができ、「パワースポット」とされる箱根神社などの名所がある神奈川県・箱根に外国人旅行者が大勢押し寄せている。訪問者数は新型コロナウイルス流行時の低迷から「V字回復」した。 小田急電鉄子会社で箱根海賊船を運航する小田急箱根(神奈川県小田原市)によると、小田急グループの箱根の乗り物を自由に乗り降りできる「箱根フリーパス」の販売枚数はコロナ流行中の2020年度には約21万6千枚まで落ち込んだ。これが23年度は約81万4千枚となり、コロナ禍前で好調だった18年度(約95万8千枚)に近づいた。 中でも人気を集めているのが、今年7月16日に就航60年を迎えた芦ノ湖の箱根海賊船だ。箱根山戦争で火花を散らしていた西武側との遊覧船競争で劣勢に立たされていた中で「当時の運航会社社長だった山添直氏がアメリカのディズニーランドで見た船をヒントに発案した」(小田急箱根)という。
中世ヨーロッパの帆船を模して造り上げた初代海賊船「パイオニア」が登場すると子どもらの人気を呼び、旅行者が押し寄せた。 ▽一番人気はクイーン芦ノ湖 現在は3隻の海賊船が活躍しており、小田急箱根が「一番人気だ」と指摘するのが2019年4月に登場した「クイーン芦ノ湖」(318総トン)だ。 JR九州の豪華寝台列車「ななつ星in九州」を手がけた水戸岡鋭治氏がデザインし、建造費は約12億5千万円に達した。 ▽箱根寄木細工をイメージ 船体は湖面に映える黄金色を基調とし、船内の床は地元の伝統工芸品の箱根寄木細工をイメージした高級感のある雰囲気が特色だ。普通船室より料金が高額な「特別船室」にはゆったりとしたソファーが並んでおり、黄金色の壁面に沿った「女王陛下の玉座」に腰かけて記念撮影を楽しめる。定員は541人。 小田急箱根は「お子様に人気があり、大人の方々にも上質なクルージングを楽しめる室内空間などが好評を得ている」と説明する。