「箱根山戦争」舞台の芦ノ湖、新遊覧船は五輪開催地の公園を意識 JR西日本「ウエストエクスプレス銀河」デザイナーが明かす裏話 連載『鉄道なにコレ!?』【番外編】
この点を富士急関係者に尋ねたところ「将来は1周75分ほどにする計画だ」と明らかにした。西武グループから買収した飲食店・物販店施設「箱根湖尻ターミナル」を改修し、完了後には「遊覧船を湖尻まで延伸する」という。湖尻では観光バスなどを駐車できるため「団体客がバスで湖尻まで来て、『そらかぜ』に乗ってもらえる」との算段だ。 「そらかぜ」の就航について小田急箱根は「芦ノ湖の船旅や箱根の魅力が高まることを歓迎いたします」とコメントし、富士急も「私たちは教えていただく立場だ」と謙虚な姿勢を示す。 小田急、富士急の双方が遊覧船のサービスを磨くことで健全な競争を繰り広げ、箱根の素晴らしい思い出を持ち帰った旅行者が繰り返し訪れることが望ましい〝航路〟と言えそうだ。 【箱根山戦争】神奈川県と静岡県にまたがる箱根地区を舞台に、小田急電鉄と西武鉄道の両グループが1968年まで約20年間にわたって繰り広げたリゾート開発の主導権争い。故獅子文六氏は箱根山戦争を題材にした小説「箱根山」を世に出し、映画化もされている。
西武グループが遊覧船事業を手がけていた芦ノ湖に小田急グループが1950年に参入し、56年に大型船を導入したことで対立がエスカレートした。西武側は所有している有料自動車道の入り口に遮断機を設置し、この自動車を経由していた小田急グループの路線バスが通行できなくする強硬措置に打って出た。 双方の法廷闘争に発展し、西武側が小田急株を大量購入するなど争いが泥沼化した。1968年12月に西武、小田急両グループの首脳らが箱根の路線バスの相互乗り入れで協力するとの調停書を交わしたことで激しい争いは事実上終結した。 ※「鉄道なにコレ!?」とは:鉄道に乗ることや旅行が好きで「鉄旅オブザイヤー」の審査員も務める筆者が、鉄道に関して「なにコレ!?」と驚いた体験や、意外に思われそうな話題をご紹介する連載。2019年8月に始まり、ほぼ月に1回お届けしています。鉄道以外の乗り物の話題を取り上げた「番外編」も。ぜひご愛読ください!