「箱根山戦争」舞台の芦ノ湖、新遊覧船は五輪開催地の公園を意識 JR西日本「ウエストエクスプレス銀河」デザイナーが明かす裏話 連載『鉄道なにコレ!?』【番外編】
長いすが無機質に並んでいたはこね丸時代に700人だった定員は550人へ減り、座席は15種類に膨らんだ。2階の屋内には支柱からつり下げたハンギングチェア、屋外の3階にブランコ風のベンチ、3階にはくつろぎながら景色を一望できるデッキチェアといった具合だ。 ▽意識したパリの公園 川西氏がデザインに当たって意識したのは、今年7月26日にオリンピックが開幕したフランスの首都パリのリュクサンブール公園だ。「いすを好きな場所に動かし、自分の居場所を作れる」のを望ましいと受け止めているからだ。 だが、航行中に衝撃があった場合にも安全性を確保することが必要となる船舶では「基本的に動くいすを固定しなければいけない」(川西氏)。自由に動かせるいすを置き、乗客が好きな場所に動かせるようにするのは不可能だ。 そこで、位置は定まっているものの、さまざまな種類の座席を設けることで「自分の居場所を発見して快適に過ごせるようにした」と打ち明ける。
▽〝大人の事情〟で立ち消えに 多種多様な座席とともに目立つのは、人工芝の部分やテーブルなどの随所に見られる富士山の形だ。川西氏は「富士急なのだから、富士山のモチーフ(を採り入れるの)は絶対だと考えた」と力説する。 それでも「あそこは富士山の形にするつもりはなかった」と指をさしたのが、4階のデッキにある富士山を模したオブジェだった。 芦ノ湖畔にある箱根神社の「平和の鳥居」が名所となっているのを念頭に、デザインを進めていた過程では「鳥居を造ろうと言っていた」。ところが難色を示す〝大人の事情〟で立ち消えとなり、「代替で富士山(のオブジェ)になった」と明かした。 ▽「あっという間」の対策 「そらかぜ」の導入で箱根海賊船に挑む富士急側だが、課題として挙げられているのが短い航路だ。双方が発着する元箱根港から1周した場合に箱根海賊船は原則70分なのに対し、富士急側は40分のため乗船客からは「あっという間の船旅で、もう少しゆっくり楽しみたかった」と残念がる声を聞いた。